▲ 4 ページ22
もしかして、
「怖い夢、見た?」
異常なまでにおびえたのは、眠りから覚めた後から。てことは、寝てる間に何かあった?
それなら、夢で何か恐ろしいことがあった?
「おれのそばにいると‥‥あなたたちが‥っ、死んじゃ‥う‥っ」
ガタガタ震えながらそう言ったきり、ニノは動かなくなってしまった。
おれにくっついたまま、ほろほろと涙だけを流している。
ただの夢だよ、といったところで、ニノが落ち着くとは思えなかった。‥それほどまでに、恐ろしいことだったのだろう。
「‥‥おれを庇って‥、みんなが‥‥っ、」
「‥もう、思い出さなくていいよ」
「顔が‥‥焼き付いて離れない‥っ」
顔というのは、死に顔だろうか。
‥‥訳はわかった。理由もわかった。
つまり、ニノをここまで追い詰めて、苦しめているのは夢の中のおれらってことだよね。
どんな顔をしてみせた?ここまでニノを苦しめるなんて。
おれがしたことであっても、許せないな。‥まんまとニノの目の前でトラウマ残す死に方するなんて、死んでも死に切れない。夢であっても同じこと。
「ニノ!」
丸まって震えるニノの顔を、ぐいっと持ち上げ目を合わせた。ニノが逃げるのを押さえて、茶色のとろけた瞳をカチリと合わせる。
「ニノの中のおれは、どんな顔だ?」
「‥ゃ、‥やだ‥‥っ」
びくっ、とまた夢の中身をおれに重ねたのだろう、ニノの背が跳ね、瞳がぶれる。
でも、逃がしてあげられない。
だって、夢の中であろうと自分の起こしたこの事態を、責任を持って弁解しなくちゃいけない。
「逃げんな」
身動ぐニノを、しっかりとこちらを向かせる。
「お前の目の前の『大野智』は、どんな顔してる?‥‥死にそうな顔なんて、してないでしょ?」
ね?と笑ってみせた。
そしたら、不規則な息をしていたニノが、安心したような顔をして、安定した。
おそるおそる手を持ち上げて、おれの頬を両手で包む。
「どこにも‥いかない?」
「いかない。」
「‥‥おおのさん‥」
「なーに?」
「やっと、‥眠れそう‥‥」
おれの顔を見て、苦しげに笑って、ようやく本当に緊張が解けた。
さっきまでは必死で気がつかなかったけど、真っ白な肌に、濃い隈ができていた。‥夢見が悪くて、きっと十分に眠れてなかったんだろうな。
かく、と頭を落としたニノをそっと横たえて、その手を握る。
夢の中でだって、君を1人にはもうしないよ?
155人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とことこ | 作成日時:2017年7月28日 14時