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「遅くまでありがとうございました。」
すぐ終わると思っていた勉強会は、彼女の熱量と探究心からどんどん話が膨らんでいき、気が付けば一時間ほど話し込んでいた。
カフェから出た彼女はおれが渡した紙袋と、先ほどの本屋のロゴで埋め尽くされたビニール袋をかかげ、また深々と頭を下げた。
『気にしないで。おれも楽しかったし。』
「本当に助かりました。わからないところあったらまた質問させてもらってもいいですか?」
『大歓迎。いつでも連絡して。』
「頼もしいです」と微笑む彼女に、おれの本当の気持ちはきっと伝わらない。でも、彼女にとって「一番頼れる先輩」という存在であるんだったらら、もうなんだって構わないとまで思えてきてしまっている。
『もう遅いし送るよ。方向こっちだったよね?』
「大丈夫ですよ!そんなに距離ないので一人で帰れます。」
『でも、もう暗いし…』
「……Aちゃん?」
「お気持ちだけで十分です」と断る彼女だけど、さすがに時間的に…と思っていたら、聞き覚えのある声がおれ達の空間に前触れもなく入ってくる。
おれより先にその声に反応した彼女は驚いたような顔でその声の主に走り寄った。
「なんでいるの?!」
「もう帰るって連絡あったから。迎えにきたの。」
「今日は遅くなるからいいって言ったじゃん。」
「遅くなるから来たんじゃん。………こんばんは。」
彼女越しにおれと目が合った彼は、ぺこっと軽く会釈する。「こんばんは」と返すけど、その視線は一瞬で彼女に戻ってしまった。
「……一人じゃ、なかったんだ?」
「あ、うん。偶然本屋さんで会って勉強に付き添ってくださったの。」
「そうだったの?ありがとうございました。」
またおれに注がれた視線に、「いえいえ」と返す。笑ってるけど全然ありがとうなんて思ってなさそうな表情。まぁ、そうだよな。彼女が他の男といて不快にならないわけないか。
「ねぇ、コーヒー買ってきてもいい?おいしかったから。」
「え、この前買ったばっかだよね?」
「期間限定らしいの。次来てなかったら悔しいじゃん。」
「わかった。行っておいで。」
「すぐもどるから。……余計なこと言っちゃダメだよ。」
「余計なことてなに?(笑)」
二人の会話から一緒に生活していることが随所に感じられて少し目線を逸らして聞いていないふりをする。
意味もなく外看板にあった商品の説明なんて読んだりしてなんとか気を紛らわしていた。
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舞子(プロフ) - yukipomさん» メッセージありがとうございます🥰たくさん読んでくださりとても嬉しいです😭胸キュンしていただけているなら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いします💐 (6月25日 21時) (レス) id: 5d40d4d8c1 (このIDを非表示/違反報告)
yukipom(プロフ) - はじめまして。更新楽しみにしてました!🥹だけどいいところで次を待つ!!みたいな状況にいつもドキドキさせられます🩷思わず何回も1から読み返しています💓次回も楽しみにしてます! (6月18日 0時) (レス) @page24 id: cb1029b802 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - みやまるさん» ありがとうございます😢ゆるゆる更新ですがお付き合いいただけますと幸いです😭 (2023年3月25日 19時) (レス) id: 2ecde9cc04 (このIDを非表示/違反報告)
みやまる(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年3月20日 3時) (レス) id: 73890cbeef (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - 佳菜さん» ありがとうございます😭今後ともよろしくお願いします! (2023年2月11日 22時) (レス) id: 2ecde9cc04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2023年1月14日 22時