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「あれ、小松?」
風磨が会社のお手伝いに行って二日目。
一階のカフェテリアに並んでいたら中島さんに声をかけられた。
『お疲れ様です!』
「おつかれ。珍しいね?今日は彼の弁当じゃないの?」
『はい。ちょっと諸事情で。』
「諸事情…?それは聞いてもいいのかな?」
『はい。むしろ、聞いていただいてもいいですか?』
「もちろん(笑)じゃあ、いつものところに行こうか?」
*
「へぇ、前の会社に、ね。」
いつもの場所でサンドイッチを広げたわたしは、風磨の話を中島さんに説明する。
全部の事情を知っているのは中島さんだけだから。こうやって話すだけで気持ちが落ち着く。
『はい。一応明日の土曜日まで。』
「本当に彼、すごい人なんだね。辞めてもなお頼られるなんて。」
『そう、ですね…。家ではそんな雰囲気ないので想像できないんですけど。』
「……そっか。」
少しだけ寂しそうに微笑む中島さん。
そのわけを聞く前に、中島さんはまた口を開く。
「まだ、話したいことあるんじゃない?」
『え?』
「話し足りないって顔してる(笑)」
『あ、え、恥ずかしい。』
「ははっ(笑)俺が気になるから聞かせて?」
気がついたときはいつもの表情に戻っていて、わたしにそう尋ねる。
はぁ、やっぱりこの人には敵わない。
わたしが遠慮していることを見越して「俺が」って言葉を添えることでその気持ちを緩和させてくれているんだ。
彼の些細な、でも誰でもできるわけではない行動にわたしは今日も救われる。
『会計部長に呼び出されたんです。……昇任試験、受けてみないかって。』
「昇任試験って…小松まだ4年目だよね?ってことは特推枠?」
『はい…。』
「すごいじゃん!でも、小松はあんまり嬉しそうじゃないね。」
『とても、光栄なことだと思っています。もちろん、推薦していただくからには受かる気持ちで臨みたいです。ただ…知識も経験もこれから試験を受ける方々と比べたら劣ります。昇任した後…のことを考えるとやっぱり自信がなくて。』
「それだけじゃないでしょ?」
『へ?』
「聞いたんじゃない?昇任したら今以上に地域を跨いだ異動が多くなるって。」
『……』
「彼との未来を考えているなら迷うのは無理ないよ。でもね、俺は挑戦すべきだと思う。」
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舞子(プロフ) - yukipomさん» メッセージありがとうございます🥰たくさん読んでくださりとても嬉しいです😭胸キュンしていただけているなら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いします💐 (6月25日 21時) (レス) id: 5d40d4d8c1 (このIDを非表示/違反報告)
yukipom(プロフ) - はじめまして。更新楽しみにしてました!🥹だけどいいところで次を待つ!!みたいな状況にいつもドキドキさせられます🩷思わず何回も1から読み返しています💓次回も楽しみにしてます! (6月18日 0時) (レス) @page24 id: cb1029b802 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - みやまるさん» ありがとうございます😢ゆるゆる更新ですがお付き合いいただけますと幸いです😭 (2023年3月25日 19時) (レス) id: 2ecde9cc04 (このIDを非表示/違反報告)
みやまる(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年3月20日 3時) (レス) id: 73890cbeef (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - 佳菜さん» ありがとうございます😭今後ともよろしくお願いします! (2023年2月11日 22時) (レス) id: 2ecde9cc04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2023年1月14日 22時