素直になれない私たちは。2 (ページ46)

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「……なるほど。」

『はい。本当にすみません…。』

気を取り直して本題を話すと、すぐに状況を理解してくれた風磨くん。

「気にすんな。Aちゃんには俺から話しておくから。」

「だから頭上げろ」と慰めてくれる風磨くんに俺の心は救われる。

そのとき、机の上に置いていた風磨君の携帯のバイブ音が鳴って。
スマホを眺める風磨くんの表情を見て、相手が小松さんだってことは簡単に想像できた。

「Aちゃん、もうすぐ駅に着くって。」

『あれ、思ったより早かったっすね！じゃあ、よかったら今日の夕飯持って帰ってください！紗絵の分、作ってたんでって…あれ？』

俺が話している最中、残りのおかずをあっという間に平らげた風磨くんは、「ごちそうさま」と言い、帰る準備を始める。

『もう帰るんすか？今駅に着いても、ここに帰ってくるまでもう少し時間かかるっすよ？』

「いや、迎えにいこうと思って。なんか、一緒に行った奴の車に乗って帰るって言ってるから。」

『え、じゃあいいんじゃ…、』

「またな、岸！あ、でも飯はもらってく。Aちゃん、岸の飯超好きみたいだから。」

すごい指の速さで小松さんに返事したっぽい風磨くんは、俺にもわかりやすいくらい嬉しそうな顔で小松さんの話をする。

「これAちゃん絶対好きなやつ！」とか「日本酒買っといてよかった〜」とか、俺が渡したタッパーに料理を詰めながら終始小松さんの独り言を喋っていて。

そんな風磨くんの姿に改めて胸が熱くなって、感動で言葉が出てこなくてただ風磨くんを見つめる俺。

「何ジロジロ見てんの？」って急に表情変えてキモがられてしまったけど(笑)

「お邪魔しました。」

『お邪魔なんて…。風磨くんの家ですよ？』

「今は二人の家だろ。」

『風磨くん、さっきの話なんですけど…。』

「大丈夫。Aちゃん優しいから。」

「じゃ！」と小松さんから連絡があってあっという間に消えてしまった風磨くん。

そういえば風磨くんが言っていた「一緒に行った奴」って、確か小松さんが昔お世話になっためちゃめちゃかっこいい男の人って言ってたなぁ。

って、まさかそれが嫌でわざわざ迎えに行ったってこと？

『人って変わるんだなぁ。』

ベランダにいた風磨くんの後ろ姿は、いつか浮いてどこかに消えてしまいそうだったのに。

でも今の風磨くんは自分の足でしっかり歩いている。

見つけたんだ。風磨くんにとって、大切な存在を。