検索窓
今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:122,987 hit

55 ページ5






『待ってください…!!』



家とは逆方向に、おそらく何の当てもなくだるそうにトボトボ歩いていた彼の背中にそう叫んだわたし。

わたしの声にピタリと足を止めた彼は振り返ると、目を丸くしてこっちを見ていて。彼が止まっている隙にわたしは走って駆け寄る。



「…Aちゃん、どうしたの?」



若干息の上がるわたしを見て、彼は驚きが隠せないと言わんばかりに目を丸くしてそう尋ねる。

スーツにパンプスだから、普通に走るときよりも疲れて、途切れ途切れになる息を整えるわたしを待ってくれる菊池さん。

顔を上げると、綺麗な髪の隙間から覗く彼の瞳と目が合ってまた顔を逸らしてしまう。



『……これから、どうするんですか。』

「え?」

『家飛び出して、…明日からどうやって生活するんですか?』

「何、そんなこと聞きにわざわざ走ってくれたの?(笑)」

『…こ、公務員として、市民の方を放っておけないから。』



なんて苦しい言い訳。そんなこと自分でもわかってる。
彼も気が付いたのか、そう冷たく言葉を放つわたしを見てまた笑みをこぼす。



「公務員としてでも嬉しい。」

『……』

「大丈夫だよ。駅前のホテルにしばらく滞在するつもりだから。」

『……』

「ありがとう。心配してくれて。」



そう言って、わたしの頭をポンポンと叩き、また一段とにこりと笑う菊池さん。

嘘。大丈夫じゃないくせに。

彼がわたしに背を向ける直前、彼の瞳の奥が、また寂しそうに揺れていて。

警備員さんに話しかけられた後も、その瞳がチラついて結局後を追いかけてきてしまった。



「てっきりこれから口も効いてくれないんじゃないかってガチで思ってたから。」

『……』

「Aちゃんが俺のこと考えてくれるなら、ずっと家出たままでもいいかな〜。」

『もう!!』

「ごめ、冗談だって(笑)」



こんなにわたしは心配しているのに、相変わらずマイペースすぎる…。

だって一ヶ月といえども家に帰れないって相当不便だよ?

お金だって別にかかるし、必要なもの手元にないし、落ち着ける場所もないし、仕事だって環境が変わるといろいろ大変なのに…。って、仕事はしてないんだった。



『……いですよっ…』

「え?」

『……岸さんと紗絵さんが家にいる間、わたしの家、来てもいいですよ…。』





*

56→←54



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (196 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
657人がお気に入り
設定タグ:SexyZone , 菊池風磨 , 中島健人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:舞子 | 作成日時:2022年1月27日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。