素直になれない私たちは。2 (ページ34)

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『風磨、どう？』

お腹もいっぱいになって、片付けを二人でさっさと終わらせてくつろいでいた頃。

わたしは足取り軽やかに冷蔵庫を開け、ソファーでテレビを見る風磨にそう声をかける。

「あ、さっき買ったお酒？」

『うん。いい感じに冷えたみたいだし。』

「いいね、飲もっか。」

『せっかくだからベランダで飲まない？最近温かくなってきたし、ちょうど桜が見えるよ。』

「夜桜？いいじゃん、ちょっと遅い花見だね(笑)」

一人で準備できるのに、風磨もキッチンに来てくれていっしょに晩酌の準備を始める。

一応お酌二人分あってよかった。

ポンっという音を立てて蓋が開くと、小さな口からじわぁと特有の芳醇な香りが広がる。やば、この街に来て初めてのお酒、かなりテンション上がってきた。

「うわ、すげーいい匂い。」

隣にいた彼はそう言ってシンクに手をつけこちらに身を乗り出し、わたしの持つ瓶に顔を近づけて鼻をくんくん、と揺らす。

いや、近いって。

さっきも注意したのに全然わかってない。
この人あざといんじゃない。
無意識だ、天然モンだわ、ナチュラルタラシだわ。危険人物すぎる。

そんなことを考えながら彼の顔を見ていると、「俺なんで睨まれてるの？(笑)」なんて上目遣いで返されてしまった。

「じゃあ、乾杯しよっか。」

『何の？』

「うーん。」

ちょっと考え込んで「俺らの出会いに？(笑)」ってドヤられる。
わたしは「はいはい」って返して先にお猪口に口を付けた。

『おいし…。』

「うわ、うっま。」

今まで飲んだお酒の中でかなり上位に入るくらい好きな味。

うまく言葉にできないけど、上品だし複雑な味わいだし、やっぱり本物は違うな。プチ感動。

隣を見ると、風磨もわたしの方を見ていてお互い「美味しいね」なんて言い合う。

家で帰って一人で飲むお酒が一番美味しいと思っていたけど、

こうやって何気ない会話しながら美味しいを共有するのも、
悪くないかもしれない。