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『えっ…、美味しそう…。』
一通りの鍋の材料は揃ったところでレジに向かっていると、ズラリと並ぶ日本酒に目を奪われる。
思わず立ち止まって目でたくさんのお酒を追いかけていると、見たことない種類ばかり。
よく見たら、どうやらこの街限定のものみたい。お酒好きのわたしはトキメキが隠せず、そう言葉が漏れた。
「なに?他にほしいものある?」
足を止めたわたしに気が付いた風磨がカートごと戻ってきてわたしにそう尋ねる。
感動して瞬きすらうまくできないわたしは、とりあえずコクコクと首を上下に振る。その姿を見て「ハハハッ(笑)」と吹き出す風磨。
「え〜、Aちゃん日本酒好きなんだ〜。」
『すき、だいすき、すっごく。』
「なにそのカタコト?おもしろいんだけど(笑)」
真剣に一つ一つ瓶のラベルを読むわたしの横で風磨も「ここ地酒有名なんだ〜」なんてつぶやいている。
えー、これフルーティで甘口って絶対わたしが好きな味。
でも、今日おなべならこっちの辛口淡麗の方が合うかもしれない。
でもでも、この街生産の酒米で作った濃厚な味わいの地酒が一番人気って書いてある。
うわぁ、すごく迷う。
『風磨日本酒飲め、…』
わたしだけじゃ決めきれないと思ったから、隣にいた風磨に意見を求めようと思って彼の方を向くと、しゃがんで頬杖ついてこちらを見ていた風磨と目が合う。
「俺?なんでもいけるよ。Aちゃんの好きなの選んで。」
そう風磨は微笑んで答えてくれたけど、
わたしは思わず目を逸らしてしまった。
びっくりした。
この人、こんな顔してお酒見ながらはしゃぐわたしのこと見ていたの?
あまりに優しくて、愛おしい人を見るような温かい瞳が、
真っ直ぐわたしに向けられていて。
それは、勘違いしそうになるくらい強く心揺れるものだった。
その瞳に囚われたみたいに身体が動かないのに、
心拍数だけが、変に上がっていく。
勘違いじゃなければいいのにって、
ほんの一瞬だけ思ってしまった。
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作者名:舞子 | 作成日時:2022年1月27日 21時