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「小松さん、来週のことなんだけど。」



「松島が悪かったね」と何度か謝られながら席について松島さんに奢ってもらった飲み物を二人していただいていると、主任が思い出したように口を開く。



『来週…?あ、主任の出張のことですか?』



来週末、東エリア西エリアに分かれて大規模な会計研修会が行われる。主任はその研修泊で参加するから、決算の仕事を任されたばかりだった。



「俺が行くはずだったんだけど、今さっき部長から予算会議の日程が変更になったって連絡があって。それが出張の日と被ってしまったんだよね。」

『えっ、予算会議って主任がメインで進行する…、』

「そう。だから欠席できなくて。申し訳ないけど会計研修、代わりに参加してもらってもいいかな?」

『それは全然構いません。むしろ、わたしが参加して大丈夫ですか…?』

「受講対象者の制限はないし、俺も一回参加したけど内容かなり濃いからいい勉強になると思う。」



「じゃあ、出張取消俺の方でしとくね」と飲みかけのコーヒーを置いた主任はパソコンに向かう。

内線電話を取って「小松が代わりに出席します」とおそらく部長と話し始めた。

わたしもまだ半分残るキャラメルラテを置いて、高まる気持ちを抑えながらパソコンに向かって出張申請の書類作成に取り掛かった。



主任は「申し訳ない」って言ってたけど、正直、わたしは心の中でガッツポーズしていた。

会計研修に限らず、大規模な研修って大体人数制限があって上位職の人しか出席できないから。

わたしみたいな下っ端最年少は、前所属で声すらかけられなかった。



だから、たまたま席が空いたっていう棚ぼた状況でも憧れの研修に研修生として参加できるのは嬉しい、ものすごく。

それに、少しでも家を空ける時間ができるなら、
わたしの精神上良い、のかもしれない。



もういかに心穏やかに過ごすか、
このときのわたしはそんなことばかり考えていた。

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作者名:舞子 | 作成日時:2022年1月27日 21時

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