素直になれない私たちは。2 (ページ14)

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いや、でも聞いてみる？

彼はわたしに家に住ませてもらってる上に、付き合っているフリをしてるという大きな貸しがあるわけで。

彼がわたしの質問を拒否するのはある意味不誠実でもある。いうならば今がチャンスなのかもしれない。

「あれ、岸来てた？」

　

キッチンで紙袋からタッパーを出していると、後ろの扉が開く音がして彼がわたしにそう尋ねる。

きっと今タイミングを逃したら聞けない。
そう思ったわたしは意を決して彼の方を振り返る。

『？！』

「あ、やっぱり。岸の肉じゃがの匂いだと思った〜。」

『き、菊池さん！！』

「風磨でしょ？」

『何で服着てないんですか？！』

わたしの後ろから岸さんからもらった肉じゃが入りのタッパーを覗き込む菊池さん…じゃなくて、風磨…。って、今はどっちでもいい。

体を密着させる彼はタオルを腰に巻いただけ。

「だって、部屋着取る前にAちゃんに風呂場まで連行されちゃったから。」

『そういうときは取ってくれって言ってください！！わたしの家で裸は禁止ですっ！！』

「はい、さーせんでした(笑)」

彼の背中を押してリビングまで連れ戻したわたしは、彼の段ボールを勝手に漁る。

「こっちだよ」なんて言ってボストンバッグの方から部屋着一式を取り出した彼はわたしを見てずっとケラケラ笑っている。

『待って！着替えは向こうでして！』

「え、また戻るの？」

『大した距離じゃないでしょ！！』

手をパタパタして浴室まで戻れと訴えるわたしに「はいはい」と返事をする菊池さん。

「パンツはAちゃんが持ってる箱の中にあるから取ってくれる？」なんて最悪なお願いをする彼だけど、これ以上近付かれるのは困るからわたしは目を細めてらしきものを手にする。

「投げるんかーい！」

『早く、着替えてっ！』

「あ、これじゃない。」

『はぁ？』

「これ、普段着用。俺、寝る時用のやつと分けてるの。」

『なにそれ、めんどくさ！』

「そこはこだわりと言ってほしいねぇ(笑)」

そんなこと言われてもどれが寝る時用なんてわかるはずない。
もたつくわたしに諦めたのか、彼が近づいてくる。

「これ。」

そう言って、一際派手な下着を手にして何故かドヤ顔の菊池さん。

「出ていって！」と立ち上がった彼の腕を叩くと、ハラっとわたしの目の前にタオルが落ちた。

「あ。」

『……』

この瞬間、わたしが今日一番の悲鳴を上げたことは、言うまでもない。