08.ザ・和風男子？/N ページ9
｢ねーねー、浴衣だってさ｡
楽ちんだしさぁ、もう着替えちゃう？
ニノちゃんも潤君もこっちおいで｣
窓の外から二人して
雪のちらつく庭園を眺めてた潤君とオレに
相葉さんののんびりした声が響いた｡
｢どれどれ〜｣
クローゼットを開けた相葉さんの隣で、
翔さんが中をひょこっと覗いた｡
｢へ〜、さすがだな｡
いろんな色の浴衣用意してる｡
これってこの旅館の一般的なオプションかな？｣
そう言って翔さんが手に取ったのは、濃い臙脂の浴衣｡
｢あ〜、でも｡
サイズはレディースとメンズで２パターンだけだ｣
新緑の浴衣を広げて、相葉さんが智の背中でサイズを確認してる｡
｢男ものだと智とニノじゃ大き過ぎない？
返って女物の方がしっくりするかもよ？｣
｢ん〜、だね〜
背中に当てただけだけど、…大ちゃん、メンズサイズじゃちょっとおっき過ぎるみたい｣
｢そっか｣
｢じゃあ、智とニノはこっちな？｣
潤君にからし色の浴衣、渡されたんだけど……｡
｢…………｣
……っつーか｡
お前は女ものに対する抵抗はないのか｡
智は全く気にする様子もなく、
潤君に手渡された濃い目の藍色の浴衣にさっさと着替えてる｡
それにしても｡
普段から作務衣や甚平なんかを好む智は想像できたけど
なんかみんな、和装がやけにしっくりこない？
着付けもばっちしで、４人とも完全な和風男子じゃん｡
呉服屋の広告のモデルでもいけそう｡
｢ニノ、ぼぅっとしてどうした？
早く着替えろよ｣
｢へっ？
あ…、うん…｣
……オレ、浴衣もそうだけど｡
こういう着物系って着たことないんだよな……｡
まぁ、適当でいっか｡
｢ニノ？
お前、それじゃ襟の合わせが逆だぞ？｣
｢へっ？えっ？
そんなん、あるの？｣
｢自分から見て左側を上にするように着るんだよ｡
お前、それじゃ死装束だ｣
呆れたように溜息ついた潤君にちょっとムッときて
皮肉たっぷりに笑ってみせた｡
｢潤君ってば詳しいんだ｡
なんか古臭いこと知ってんだね｡
意外にオジサンなんだ｣
｢ん〜、俺なんのかんので200年くらい生きてるからな｡
人間がいう小学生くらいの時は着物に袴だったし｣
｢あ、そっか……｣
だからみんな、着物に慣れてるんだ｡
毎日が当たり前過ぎて｡
つい忘れてしまう｡
智も翔さんも相葉さんも潤君も
みんな、人間じゃなかったんだっけ｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
