07.離れの奥座敷/A ページ8
｢うわぁ…!
すげぇ広い…!!｣
｢あぁ!!
商店街の特賞で、まさかこんなすげぇ部屋泊まれるとは思ってもみなかった!!｣
｢だよね!?
オレも毎年相葉さん手伝ってたけど、もっとしみったれた景品だったのにさぁ｣
｢おい、ニノ!!
こっち来てみろよ!?
庭が一望できる!!｣
｢潤君、雪、雪だよ!!｣
いやいや｡
ニノちゃんも潤君も言い過ぎだし｡
毎年商店主の皆さんは
無い知恵と袖を振り絞って、皆さんに喜んで貰おうと頑張ってんだよ？
｢しかし…、寝て起きたと思ったら、大はしゃぎだな｣
｢ホントだね｣
翔ちゃんと大ちゃんは荷物を部屋の隅っこに置きながら
嬉しそうに庭眺めてる潤君とニノちゃんに目を細めてる｡
オレ達が案内された部屋は、旅館の中でもかなり奥まった位置にある離れの部屋｡
広くて綺麗で風情がある、いわゆる純和風の部屋だ｡
景品に用意した旅館は、
そこそこ名の通った老舗旅館だって
そこまでは会長さんにオレも聞いてたけど
まさかこんな離れのいい部屋に泊まれるだなんて
ニノちゃん達じゃないけど
正直、思ってもみなかった｡
会長さん、今年は例年になく頑張ったのかな？
｢お気に召して頂いて何よりです｣
入り口で正座して、三つ指ついて深々と頭を下げたのは
この部屋にオレ達を案内してくれた旅館の人｡
見た目年齢は、大ちゃんや翔ちゃんと同世代ぐらい？
すらっと背が高くて、
切れ長の瞳が印象的な、お醤油顔のお兄さんだ｡
｢当館へお越しいただき、誠にありがとうございます｡
私は皆様のお世話をさせて頂きます、
何かございましたらなんなりと、私にお申し付け下さい｣
｢珍しいですね｡
いくら老舗とはいえ、部屋担当なんてつくんですか？
昔はともかく、今時、あまり聞かないシステムですよね？｣
翔ちゃんの質問に、於呂さんは屈託なく微笑んだ｡
｢女将の方針です｡
当館にお泊まり頂いたお客様には、より快適にお過ごし頂けますよう、きめ細かな心配りを提供するようにと｡
……もうじき入浴が出来るようになります｡
そちらのクローゼットに、浴衣を用意致しておりますので、お好きなモノをお選び頂いて、のんびりお過ごしください｡
それでは｣
於呂さんはにこやかに微笑むと、また深々と頭を下げて
オレ達の部屋を後にした｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
