44.真夜中の攻防3/A ページ45
月明かりが射しこむ窓辺で翔ちゃんは妖艶に微笑む｡
きめ細かな白い肌が月光の下、高貴な真珠を思わせる輝きを放つ｡
赤く熟れた唇に、ゆっくりと指を滑らせた翔ちゃんからは、この人が本来持つ
匂い立つような色香が溢れては零れる｡
この緊張感と、翔ちゃんの色っぽさに飲まれて
オレはただただ、ゴクリと喉を鳴らした｡
｢まず、於呂さん｡
私達が宿泊した部屋に、結界を施したようですね｡
これは私の友人でもある、大野氏に貴方がお話したことです｡
間違いありませんね？｣
うすら笑いを浮かべたまま、ゆっくりと於呂さんが頷く｡
満足そうな笑みを浮かべた翔ちゃんがその先を続けた｡
｢しかもこれはニノを守るため｡
神代に生きた、五穀豊穣の女神と同じ肉体を持つニノは、人外の者に命を狙われやすいですから｡
でもこれは、この地に息づく雑多な物の怪を警戒したというより、ある特定の人物に警戒してのことです｡
それがヒルコ｡
ヒルコもまた同じ、神代に産まれ、そのまま親に葦の舟で流された憐れな者｡
何故かソイツがニノを狙ってる｣
翔ちゃんはゆっくりと吐息を吐くと、一度煙管を咥え、煙の輪を吐きだす｡
｢話を少し、違う尺度から進めていきましょうか｡
我々はこの国で生まれ、この国で育った｡
確かに私は大陸へ渡ったこともありましたが、だからといって、それは一時のこと｡
おれや智君は、日本が貴族社会を確立する平安時代には二人して悪さもしたし、雅紀もおれ達より年下だけど、外国から渡ってきたわけじゃない｡
人間の時間的概念で言えば、おれ達、ずいぶん昔からこの国で息づいてるのに｡
それでも貴方は、おれ達をさっきから渡来だ舶来だと言う
於呂さん……
つまり貴方は、おれ達が産まれる前、ニノが持つ肉体の主、
｢えっ？えっ？
翔ちゃん、意味分かんないよ!
そのことと、オレ達を渡来の者なんて於呂さんが言うこととどう繋がんの？｣
せっついたオレに
｢つまりな？｣
いつもの笑顔を浮かべて翔ちゃんが答えた｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
