41.不穏な空気/A ページ42
なんて突っ込みを入れたら、今度は大ちゃんに頭張っ倒された｡
間髪いれずにおんなじところを、翔ちゃんにも張り倒される｡
二人とも笑ってるけど、冗談にしては力加減が本気じゃない？
なんか痛すぎるんですけど!?
｢ところでさー、潤もニノも寝ちゃったし｡
二人ともおれに付き合ってくれない？｣
｢何処に？｣
ニッコリ笑った翔ちゃんに、まだじんじん傷む頭を抱えながら涙目で顔を上げる｡
｢おれさぁ、さっき飲んでばっかだったから小腹減っちゃって｡
ラーメンでも食いにいかない？｣
｢ラーメン？
いいねぇ〜、俺も行く行く〜｣
布団から出た翔ちゃんの背中にくっついて、ひょこひょこ猫背で歩いてく大ちゃん｡
｢あっ、ちょっと二人とも待ってよ!
こんな時間じゃ繁華街まで行かないとラーメン屋さんなんて開いてないよ!?
さすがにこの恰好じゃ寒いって!!｣
オレの呼びかけなんて聞こえてないのか、どんどん部屋を出て行こうとする二人｡
それにあの人達、お財布も持ってないんじゃない!?
これじゃ某ご長寿アニメのオープニングテーマになっちゃうでしょ？
財布を忘れて愉快なサザエさんでしょーがっ!!
大ちゃん達の財布と二人のダウンコートを手に取って急いで部屋のドアを開けると
｢あれ…？｣
非常灯の明かりがぼんやり灯る廊下で、二人が見知った顔の男と見つめ合っていた｡
｢こんばんは、於呂さん｡
夕方降ってた雪も止んで、空気が凛と冴えてる｡
今夜は月が綺麗ですねぇ｣
煙管を咥えて悠然と微笑む翔ちゃんに、さっきまでの柔和さはない｡
触れたらそれだけで皮膚を斬り裂かれてしまいそうな程、ヒリついた緊張感を漲らせている｡
｢こんばんは、櫻井様｡
お客様に失礼かと思いますが、当館の共有スペースは全館禁煙でして｡
お煙草を楽しみたいのであれば、お部屋の方でか分煙スペースのみにして頂けませんか？｣
辺りを満たしていく気迫に飲み込まれることなく、
冷たく無機質な於呂さんの瞳が悠然と構える翔ちゃんを捉えた｡
翔ちゃんも於呂さんの瞳にひるむことなく、紫煙をくゆらせ背を撓らせる｡
｢…今日は二宮がお世話になったようで｡
大野から聞きました｡
少しお話を伺えませんか？｣
｢嫌だ、と言ったら？｣
｢そう言うと思ったよ、於呂！
答えろ!!
貴様、何者だ!?
一体何を知ってる!!｣
翔ちゃんの怒声に無表情だった於呂さんの口角が、ゆっくりと持ちあがった｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
