03.その一言が、僕の心を震わせた/O ページ4
｢ねぇねぇ潤君、もうちょっと!
もうちょっとだけでいいから!
尻尾だけでも触らせて？｣
｢ヤダよ、お前容赦ないもん｣
｢ね〜、今度は優しく触るから｡
潤君がヘンな声出なくて済むように気をつけるからさ｡
ねっ？ねぇ？
いいでしょ…？｣←超うるうる上目遣い
｢…………｡
//し、仕方ねぇなぁ〜
ちょっとだけだからな!?」←負けた
｢うん、ありがと♪｣
車に乗ってから終始ご機嫌なニノが、
ふわりと揺れた潤君の尻尾を嬉しそうに撫で撫でしてる｡
ニノってば子供みたいにはしゃいじゃって｡
普段は斜に構えてるニノが、こうも自分の気持ちを素直に出すなんて珍しい｡
旅行｡
そんな楽しみにしてたのか｡
いつもと違うニノの様子を見てると、なんだかこっちまで嬉しくなる……
……あれは遡ること1ヶ月前｡
エキマチ商店街の秋祭りの福引で
相葉ちゃんが当てた特賞の豪華食事付温泉旅館宿泊券を
みんなで眺めてた時のこと……
｢ヘコむなぁ……
オレ一応商店街の人間だもん｡
主催者側が特賞当てちゃうって、コレ反則技だよね？｣
テーブルに顔埋めて、相葉ちゃんが宿泊券眺めながら
盛大な溜息をついた｡
お茶飲んでた翔君が、相葉ちゃんの様子に苦笑を漏らす｡
｢雅紀の気持ちは分かるよ｡
会長さんは『当たりは当たり、楽しんできて』って言ってくれたけど｡
なぁ……
そこまで落ち込むなら、そのチケット返せば？
特賞引いた罪悪感でいっぱいなんだろ？｣
｢えっ？
返しちゃうの!?｣
翔君の意見に甲高い声上げたのが、他ならぬニノだった｡
みんなの視線が一斉に集まって
ハッと我に返ったのか
ニノは取り繕ったような作り笑い浮かべて、
｢ゴメン、なんでもない｣
マグカップのココアを慌てて啜ったけど｡
……なんとなく思ったの｡
今のニノの声は、聞き逃しちゃダメなんじゃないかって｡
ニノの傍にいたくて
人の世界で暮らしてみても
未だに人間が何考えてんのかなんて、俺にはよく分かんないけど……｡
でも、さっきのニノの声は
朱い女、背中に隠した時みたく
ニノの『心の声』に聞こえたから………
だから｡
｢……ニノ、遠慮しなくていいから｡
言いたいことあったら言ってみな？｣
ニノの背中を軽く叩いて、その先を促した｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
