ぼくらのおうち｡5～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ30)

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29.昔々の御伽草子2/S ページ30

｢古事記では三貴子(みはしらのうずみこ)、アマテラス、ツクヨミ、スサノオが産まれる前の出来ごとだとされてる｡

ちなみにスサノオは櫛名田比売(くしなだひめ)の旦那さんになる人ね｡

スサノオと八岐大蛇の伝説は知ってるだろ？｣

おれの言葉に智君も刺身をつつきながら小さく頷いた｡

｢アレだろ？
スサノオが櫛名田比売(くしなだひめ)を守る為に八岐大蛇を退治して、その後二人はめでたく結婚しました、ってハナシだろ？

まぁ、ホントかどうかは分かんないけどさ｡

でもなんで？
翔君の言ってる伝説上のヒルコが、於呂が言ってたヒルコだとして｡

なんでそんなヤツのヒルがニノの肌に吸いつてたワケ？｣

おれも赤貝の刺身を口の中に放り込んで、また一口酒を煽る｡

｢さぁ……

でもニノだって神代に生きた櫛名田比売(くしなだひめ)の肉体(うつわ)を持ってるんだ｡

ちょっと智君の話だけじゃ、於呂さんが今後、どう関係してくるのか分かんないけど……

ちょっと警戒した方がよさそうだね｡
今後はニノを一人にしない方がよさそうだ｡

智君｡
この旅行、楽しいだけじゃ終われない｡
多分一筋縄じゃいかないよ？｣

片方の口角を持ち上げると、智君はお猪口の酒を一気に煽った｡

｢於呂なんて関係ないよ｡
この先何が起こっても、ニノは俺が守り抜く｣

何か大きな力が動き出そうとしてるみたいで

いつもなら安心できる智君の言葉にも

心の中に出来た黒い沁みは

波紋のように大きく広がっていった｡