27.日々是成長也/S ページ28
｢あのね？
ヤキモチってのは、何も恋心を持った相手にだけ抱く感情じゃないんだよ？
自分より優れた相手に抱く時もあれば、親兄弟、親友、自分に近しい関係の相手に抱く時もある｡
自分が知らない世界の人間に心許したニノにもやもやした｡
これって立派なヤキモチだよ｡
子供じみた感情だけど…
貴方にとっては成長だ｡
そういう感情、誰かに持ったこと今までなかっただろ｡
貴方も物の怪らしく個人主義の人だから｣
｢……そう言われれば｣
注がれた酒を飲み干して、ほぅ…と吐息を漏らした｡
｢安心したよ｡
おれ、今でも初音のことが心の何処かでひっかかってたから……
なんにも言わないけど、
『別離』を思い知った初音の死は、それなりの傷跡を貴方の心に残しただろうからね｣
｢別に…そんなことないよ｣
『二度と人間には関わりたくない』
あの日、冷たくなった初音を前に
そう言いきった智君の小さな背中を思い出す｡
あれは本心だったんだろう｡
それくらい智君にとって、永遠の別離は辛い体験だったんだ｡
ニノにだって最初は、心を許すつもりなんてなかったんだろう｡
でも今は、智君にとって何にも代えがたい、ニノは特別な存在だ｡
きっかけはどうであれ
今の貴方は
ニノが
傍らであの子を、見守り続けてる訳じゃないでしょう？
｢いいことだと思うよ｡
凄く素敵なことだと思う｡
大切に思える存在が増えていくってことは、幸せなことだから｣
｢酒飲むとやっぱお喋りになるんだな、翔君は｡
初音の事なんてすっかり忘れてたよ｣
｢貴方、個人主義だけど冷酷な奴じゃない｡
そんな見え透いた嘘、おれについても無駄だよ｣
｢……喰えねぇ男だな｡
人間のこともよく知った口ぶりだし｣
｢伊達にこの200年、子育てしてきてませんって｡
子供育てるには、周囲との和が大切ですからね｣
｢俺は…よく分かんないまんまだよ｡
朱い女の一件以来、ニノが考えてること、もっと理解しようとしてるつもりだけど……
でも未だに人間のこと、分かんない事ばっかだ｣
｢それでいいんだよ｡
まずは理解したいって思うことで、最初の一歩が始まるんだから｡
貴方はニノと共に成長してく｡
ニノの成長が貴方の心の成長を促す｡
パートナー…って関係が一番言い得てるのかな｣
おれの言葉には返事をせず、智君はただ静かに酒を煽った｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 806人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
