24.烏天狗と謎の男/O ページ25
｢あ…、智｡
おかえりなさい｣
あれ？
なに？
なんだこの空気｡
｢於呂さんがね？
コーヒー牛乳わざわざ届けてくれたの｡
オレが飲みたがってたの、智が於呂さんに伝えてくれたんでしょ？｣
｢……知らねぇよ、そんなん｣
なんだコイツ｡
なにニノの腕、慣れ慣れしく触ってんだよ｡
｢アレ？
智じゃないの？
あ、そっか｡
じゃあ翔さん達だったんだ｣
っつーか、距離感｡
おかしかねぇか？
ニノはそう簡単に、自分の懐に人を入れるヤツじゃない｡
なのに数時間前に逢ったばかりのコイツが
なんの警戒心も抱かせず、
ニノとこんな近い距離感でいるの、
どう考えてもおかしいよね？
｢……飲んだならコレ冷蔵庫入れとくわ｣
｢私もこの辺で仕事に戻ります｣
｢うん、
於呂さん、色々ありがと｡
智もアリガトねー｣
……その言い方｡
俺は『おまけ』か｡
だいたいニノもニノだよ｡
なんだよ、その懐っこい笑みは｡
その笑顔引き出すまで、俺がどんだけ苦労したと思ってんの？
なんでさっき会ったばかりのヤツに
そんな無防備な笑顔晒してんの？
於呂っつったっけ？
なんかいけすかねぇ、コイツ｡
無条件にいけすかねぇ｡
ブチブチ言いながら買ってきたコーヒー牛乳冷蔵庫に入れてたら
部屋から出てきた於呂が小さな声で俺に囁いた｡
｢……無能なヤツめ｣
｢はっ？｣
｢部屋に結界まで張ってあやつらから姫君様を隠したというに｡
守護者のお前が無能だから、ヒルコのヒルに見つかってしまった｡
所詮渡来の物の怪はこの程度が限界か｡
お前が無能だから、
守護者といっても、どうせ姫君様の血肉が望みの卑しい者め!｣
｢………｣←後ろめたい事があるので言い返せない
｢下賤の者の分際で…!
今すぐにでも彼の御方から離れ、二度と姿を現すな!
この先はお前のような低級な物の怪の出る幕にあらず｡
和也君は私が守り抜く｡
貴様はお役御免だ!!｣
一気にまくしたてると
於呂は呆然としたままの俺の隣を通り抜け
扉の向こう側へと消えていく｡
なんだアイツ｡
なんなんだよ、アイツ!
前言撤回!!
『いけすかねぇ』じゃなくて
俺、アイツ大っ嫌い!!!!
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
