23.仲良くなれそう/N ページ24
なんでだろう…？
オレ、そんな簡単に人のこと信じないタイプだと思ってたのに｡
この人の少し低めの声とか
今見せた柔らかい笑みだとか
ずっと昔から知ってるみたいに凄く安心してる……
｢飲み物持ってきてくれたり、
雪うさぎわざわざ作ってくれたり…
仕事とはいえ、こういう気遣いは個人レベルのハナシでしょ？
嬉しいです｡
ありがとうございます｣
ぺこりと頭を下げたオレに、於呂さんは慌てて首を振った｡
｢い、いえ!
そんな…!!
私は当然のことをさせて頂いたまでです…!
お客様にそのように頭を下げて頂くなんて…!
どうぞ顔を上げて下さい!!｣
ぶんぶん首振って、顔赤くしてる於呂さんに
この人本来の人柄を見たような気がして
それが可笑しくて思わず吹き出した｡
｢あははっ、於呂さんってもっとクールな人だと思ったのに…!
そうでもないんだ｣
オレの言葉に於呂さんも苦笑を浮かべた｡
｢もう…、からかわないでください｣
｢和也です｡
オレ、和也っていいます｣
｢和也様…？｣
｢やだなぁ(笑)
様付けはヤメテ下さいよ｡
和也でいいですよ｣
｢じゃあ…、和也君、ならいい？｣
お、敬語が取れた♪
距離が縮んだみたいでなんか嬉しい｡
｢えぇ、そう呼んで下さい｡
改めて宜しくお願いします｣
差し出した手に、於呂さんが躊躇いがちに自分の手を差し出した｡
｢宜しく、和也君｡
ここでの時間が君にとって特別な思い出になるように、誠心誠意お世話させて貰うよ｣
｢ハイ…!｣
お世話係っていう立場を飛び越えて、於呂さんとは仲良くなれそうな気がする｡
｢へぇ…!
じゃあ、旅館の外も色々いいお風呂があるんだ!｣
｢うん、明日行ってみるといいよ｡
ガイドブックに載ってないけど、地元贔屓のいいお湯が沸いてるから｣
於呂さんは地元の人でここらへんの温泉には精通していて
見どころや他の温泉について、詳しく教えてくれた｡
ふいに於呂さんの視線がオレの腕を捉えて
浴衣の上から労わるようにそっと肌を撫でる｡
｢本当に済まなかった｡
不浄なる者が入れぬよう、この部屋を私の力で満たした筈が…
返って貴方を苦しめる結果になってしまったようだ……｣
｢……？
於呂さん…？｣
顔を上げた於呂さんの瞳がオレを捉えた刹那
｢ニノ、ただいま〜
コーヒー牛乳買ってきたよ〜｣
コーヒー牛乳の入ったビニール袋を提げて智が戻ってきた｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
