18.八咫烏の羽根2/O ページ19
｢今、助けるから｣
ニノの皮膚の下に入り込んでいくヒルは
ぐりぐりと傷口を広げて、体をめり込ませていく｡
ぐじゅ…と、嫌な音を立てて
ニノの肉にまで、喰らい付こうとしてるみたい｡
｢……させねぇよ｡
ニノは俺のだ｡
誰の好きにもさせねぇ｣
そうだ｡
コイツは俺のモン｡
ニノを好きに出来るのは俺だけだ｡
赤ん坊の時
俺がニノを見つけた時から決まってる｡
何処の誰がこのヒルを操ってるか知らねぇけど
いいようになんてさせてたまるか｡
ニノの滑らかな肌の上から、
ぶよぶよしたヒルの体が脈打ってるのが見える｡
一見非力に見える小さな生き物は
操り手の力を具現化させたいわば象徴｡
俺達の眼を盗んで
全くニノに気付かれることなく、
すんなり体に取りついたのを見ても
これだけニノが苦しむのを見ても、そこそこの力の持ち主と見た｡
｢でもこれで終わりだ｡
全部祓ってやる｣
白いきめ細かな肌に、
皮下組織にまで達したヒルは
本物のヒルならあり得ない『ギッ、ギッ』という鳴き声を残して
羽根が突き刺さるごとに、そのまま霧散して消えていく｡
ヒルが消えるごとに
荒く乱れた呼吸が穏やかなソレへと変わっていき
深く刻まれていた眉間の皺が消えていった｡
全部のヒルが霧散した頃
｢さ、とし……｣
ニノが掠れた力ない声で、ニノが俺の名を呼んだ｡
｢ニノ……｣
ニノがか弱い力で、俺の浴衣の襟をきゅっと握ったから｡
俺もニノの背を抱く腕に力を込める｡
｢もう大丈夫｡
痛いの、治っただろ？｣
喘ぐように薄い唇が僅かに開いたのに｡
｢ニノ…、ニノ…!｣
呼びかけに応えることなく、薄茶の瞳から急速に光が消えて｡
ニノはそのまま意識を飛ばした｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
