11.ハダカのお付き合い/S ページ12
｢ふぅ〜、やっぱいいよねぇ、露天風呂！
花屋ってそうは見えないかもだけど、一日中動きっぱなのよ｡
あ〜、沁みるわぁ〜｣
｢オッサンかよ、お前｣
隣で顔ばしゃばしゃした雅紀が、
雪のちらつく空見上げて満足そうな吐息を漏らした｡
内風呂で体を軽く洗ってから、みんなで早速入った露天風呂｡
うっすらと積もった雪を愛でながら熱めの湯につかると
頬を撫でる外気の冷たささえ心地いい｡
｢んふふ、気持ちぃ〜｣
顔の半分くらいまで湯に浸かっては
ニノはぷくぷくしながら気持ち良さそうに目を細めてる｡
雅紀なそんなニノを見ながら、ふわりと柔和な笑みを浮かべた｡
｢今日のニノちゃんは楽しそうだね｡
『年相応』っていうか｣
｢雅紀？｣
｢……あの子さぁ｡
肉親に早く先立たれたせいか、年齢の割に大人でしょ？
好きなこと言ってる様でいて、ちゃんと考えて喋ってるし｡
我慢強いしさ｡
ああいう顔見ると、…なんか安心するよね｣
｢……あぁ｣
ニノは隣の智君にじゃれついて、かなりご満悦の様子｡
時々智君の首に腕廻して、何かをヒソヒソ耳打ちしては
曖昧に相槌うつ智君に、
悪戯した子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべてる｡
でも隣の智君はさっきから難しい顔したまま｡
眉間に皺まで作ってる｡
ニノもそのことに気付いたらしく
『お〜い』なんて言いながら
智君にぴったりすり寄って、ほっぺたぺちぺちして顔覗き込んでる｡
｢……？
どうしたのかな、大ちゃん｡
さっきからずいぶん難しい顔して｡
いつもの大ちゃんなら、『俺の
ニノちゃんの汗の一つも舐め取って、ぶっ叩かれそうなモンなのに｡
やけに大人しくない？｣
｢なんだ雅紀、お前知らなかったのか｣
｢へっ？
なにを？｣
｢あーーー!!!
もう無理!!!!!｣
急に立ち上がった智君に、ニノもきょとんとしてる｡
｢ごめん…、ニノ……
俺、先出るから……｣
｢へっ？
でもさっき入ったばっかじゃん｣
｢無理……
くらくらしてきた……｣
｢どうしちゃったんだろ｡
なんか大ちゃん、ふらふらしてるよ？｣
｢智君、そんな長湯出来ない人だから｡
ほら、言うだろ？
烏天狗だけに……｣
｢ひょっとして『烏の行水』？｣
百戦錬磨の烏天狗にも意外な弱点があるもんだ、なんて｡
隣の雅紀は智君の小さな背中を見送って、人の悪い笑みを浮かべた｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年12月14日 20時
