ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ45)

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17.それがアナタの弱点/A ページ45

｢時軸の木の所為でみんなの時間が止まってるなら、燃やしちゃったらどうなるかな？｣

燃え盛る時軸の木の下で

唇に指を滑らせて、

翔ちゃんやユエ君にニッコリ笑って見せた｡

｢うわぁぁぁぁ!!!
やめてくれ、やめてくれぇ!!!
ピンイン、ピンイン!!!｣

今にも泣き出しそうな

ユエ君の声に小さく溜息をつくと

翔ちゃんはいつも通り煙管を咥えて、ゆっくりと紫煙を吐き出す｡

煙は瞬く間に、翔ちゃんの体を覆い尽くした｡

……煙に包まれた翔ちゃんが、一歩を踏み出す｡

覗いた足元は

さっきまでの白に赤い桜の漢服じゃなくて

見慣れたスーツのズボンと黒の革靴だった｡

｢……ったく、仕方ねぇな｣

少し長めの前髪を、気だるげに掻きあげた後

優美に。

音もなく｡

トンと地を蹴った体が、空を舞う｡

一気にすぐ鼻先までユエ君との間合いを詰めた翔ちゃんが

一歩も身動きが取れなかったユエ君に唇を尖らせた｡

｢ユエリャン、めっ!
悪戯が過ぎた子供は、後でお仕置きされるもんだぞ？｣

｢え……｣

呆けた返事をしたユエ君の胸に、翔ちゃんの煙管が軽く触れた｡

｢うわぁっ!!!!｣

同時、ユエ君の体は重さなんてないみたいに吹っ飛び、

駅の壁に激突すると、そのままバウンドして崩れ落ちた｡

｢ゲホッ、ゴホッ!!!｣

｢立て、ユエリャン｣

うずくまったまま背中を震わせて、

激しく咳込むユエ君に、翔ちゃんの静かな声が響く｡

……しかし、圧巻だね｡

洋服にほんの僅か、煙管の先が触れただけ｡

たったそれだけでユエ君の体が吹っ飛んだ｡

間合いを詰めた時の上品な所作といい

気だるげな瞳の、艶やかな輝きといい

直接相対してるわけじゃないのに

翔ちゃんが一瞬見せた妖気に

薄ら寒いものが走った｡

あれが本来の櫻井翔。

潤君がニノを襲ったあの時

大ちゃんが翔ちゃんに刀を収めたワケだ｡

｢ホラ、早く立てって｣

力なくうなだれるユエ君の腕を引っ張って

自分の眼の前に立たせると、翔ちゃんは一度、深い溜息をついた｡

｢ユエリャン、顔洗って出直してこい｡
おれを娶りたかったらおれより強くなれよ｡
この程度でおれを手に入れようなんて百年早い｣

あんな言い方して｡

それじゃユエ君が翔ちゃんのこと、諦めれないじゃない｡

大ちゃんの強さに引けを取らない強さを持つアナタの弱点は

厳しくなりきれないその甘さだね。