14.貴方の笑顔はオレが守る。/S ページ42
｢……待てよ、小僧｣
震えるくらい両の拳を握り締めて、雅紀がおれを抱くユエリャンを睨みつける｡
｢翔ちゃんを離せ…!｣
｢俺の邪魔をするな!!｣
｢雅紀!!｣
鋭く研ぎ澄まされた刃のような緑が雅紀の両頬を掠めた｡
だけどそれすら気にする様子もなく
いつもは穏やかに微笑む瞳に剥き出しの闘志を漲らせ
雅紀はユエリャンを睨み据える｡
｢確かにユエ君の気持ちも分かるよ？
ずっと好きだった女性を手元に置きたい気持ちも分かる｡
だけど君、翔ちゃんの何を見てきたの？
翔ちゃんの何処が好きなの？｣
｢な…に……？｣
｢翔ちゃんは嫌だって言ってんの｡
女になった自分が嫌いだって言ってんの｡
翔ちゃんは息子の潤君が誰よりも大切なんだよ？
ウザがられる時もあるけど、
確かにうざいわーって思う時もあるけど!!｣
雅紀……、今のかなり傷つく(泣)
｢それでも日々の子供の成長が何よりも楽しみな、優しいお母さんなんだよ!!｣
｢お母さんじゃなくてお父さんな!?
雅紀ソレ、わざと言ってるだろ!｣
｢翔ちゃん!!
今オレ大事なハナシしてんだから、ちょっと黙っててよ!!!｣
｢あ…、すいません……｣
｢とにかく!!!
本当に好きなら、翔ちゃんの幸せを第一に考えるべきだろ!!
翔ちゃんがどうしたくて、
翔ちゃんがどうすれば笑顔でいられるか、
それを最優先させるのが男だろ!!
こんなふうに無理矢理翔ちゃんを女の子にさせて…
自分に縛りつけるなんて、絶対に間違ってる!!｣
きっぱり言い切った雅紀が、おれの姿をアーモンド色の瞳に映す｡
｢確かに可愛いけど｡
確かに美人だけど｡
撫で肩スーツより男ならこっちの方が断然いいのも痛いくらい分かるけど!!｣
｢雅紀テメェ!
真剣なフリして遊んでんじゃねぇ!!｣
｢翔ちゃんの心を歪めたら、翔ちゃんが幸せになれないじゃないか!!!｣
｢……雅紀｣
……ヤバい｡
今の、ちょっとカッコ良かった｡
……雅紀の周りに青白い炎がぽっ、ぽっ、と灯る｡
｢狐火……｣
青白い焔が揺らぐ様はあまりにも幻想的で、思わず吐息が漏れた｡
｢お前…、俺とやる気か？｣
｢翔ちゃんは渡さない…
翔ちゃんのことちゃんと見てないお前に、翔ちゃんは渡さない!!
翔ちゃんの笑顔はオレが守る!!!!｣
｢//………｣
ヤバい｡
今のは更に、きゅんときた｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年10月30日 1時
