ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ37)

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09.謎の男の登場/S ページ37

｢なんだよ、雅紀!
あんだけの人さばかなきゃいけないんだから…｣

ふいに手首を掴まれて、思わず叫んだおれは

後ろを振り返って閉口した｡

｢見つけた…、やっと見つけた……
………ピンイン｣

｢…………誰？｣

歳の頃ならまだ雅紀よりも若いだろうか｡

20代前半ぐらいの切れ長の眼の青年が

おれの手首ぎゅっと握りしめて

まるで1,000年の想いを伝えるくらいの勢いで

熱っぽい目でおれを見つめてる｡

いや、騙されないぞ｡

この目、さっきの雅紀の目と類似品だ｡

｢なぁ……
俺を憶えてないのか？
俺は1,000年近い時間を、お前だけを思って生きてきたのに……｣

｢翔ちゃん、この方お知り合い？
熱烈ラブコール送られてんじゃん｣

｢さぁ……
おれも全然憶えのない顔なんスけど……｣

その男は涙を滲ませた瞳でおれを見つめながらぐっと引き寄せて

急におれを抱きしめた｡

｢ユエリャンだよ!!
忘れたとは言わせないぞ!!!

ピンイン!!
お前、俺と夫婦の契りを交わす約束をしたじゃないか!!!｣

ユエリャン？

ユエリ…ャン…？

｢あぁーーー!!!!
お前、ユエリャンか!?
あの子供だったユエリャンか!?｣

｢あのー、翔ちゃん？
オレだけおいてけぼりなんだけど｡
事情説明して貰っていい？｣

｢おれがまだ中国王朝に紛れ込んでた時、よく遊んでやった妖狐だよ!!｣

｢遊んでやった？
飛縁魔(ひのえんま)の『遊んでやった』ってなんか不潔｡
いけないんだぁ～
翔ちゃんてば純情な男の子弄んだんだぁ～｣

｢ちげーし!!
そういう意味じゃねぇよ!!

コイツまだほんのガキで、ままごととか、鬼ごっことか、一緒にやってやったんだよ!

因みにピンインはおれが中国で使ってた名前!
桜って意味なんだ｡
ユエリャンはお月様｡

いや～、あん時のユエリャンか？
でっかくなって、いい男になって!!｣

ぐしぐし頭撫でてやると、ユエリャンはおれの手を払いのけた｡

｢俺を子供扱いするな…！
俺はお前がいなくなってからも、お前だけに恋い焦がれ、娶ることだけ考えて生きて来たんだ!!｣

｢……っつっても｡
ソレ、お父さんお母さんごっこの話だろ？
それにおれ、男だし｣

｢そこだよ!!
なんでお前、いきなり男になってんだよ!?
俺の知ってるピンインは、宮廷一の理知的な美女で、俺の理想の女だったのに!!｣

｢何コレ｡
翔ちゃん、この忙しい時に面倒事起こさないでよ｣

……おれのせいじゃねぇし｡