ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ32)

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04.飛縁魔の苦悩/S ページ32

｢翔ちゃんこれ……
翔ちゃんのことだけ考えて作って来たんだ……
受け取って欲しい……｣

アーモンド色の瞳を熱っぽく潤ませて、雅紀は真っ赤な薔薇の花束をおれに差し出す｡

ここは大学の構内、おれの研究室｡

平安時代を専攻してるおれの研究室に、雅紀が突然薔薇の花持ってやってきた｡

｢…櫻井教授｡
彼は確か大学構内を花で飾るよう委託されてる花屋では？
お知り合いなのですか？｣

｢えぇ…、まぁ｡
一緒に暮らしてますから｣

……しまった｡

口が滑った｡

どう見てもコレ、雅紀がおれに告白しに来たみたいに見える｡

若干どころかおれだってかなりこの状況に動揺してる｡

このシチュエーションで一緒に暮らしてるって、絶対に誤解されたじゃん｡

近く予定されてる学会の発表について

たまたま打ち合わせに来てた教授の一人が、呆けた顔して湯呑を床に落とした｡

｢受け取ってよ｡
おれの思いを詰め込んで束ねてきたんだから……｣

待て｡

待て待て待て待て｡

今まで一度だってそんなそぶり、見せたことなかっただろ｡

落ち着け、櫻井翔｡

落ち着いて、じっくりとっくり考えてみろ!

そういや雅紀のヤツ、初めて会った時おれのこと

美人だとかもろ好みだとか言ってなかったか？

まさかと思うけど、その頃から実は笑顔の下で苦しい恋にもんどりうってたとか？

しかたあるまい｡

おれも人を惑わす為に、天からこの美貌を授かった身だ｡

いろんな意味で雅紀が惑わされても仕方ない｡

しかし問題は雅紀じゃない｡

おれの職場である大学の、しかも同僚でもあるハゲ親父達に

こういう微妙な現場を目撃されたことでもない｡

問題は潤だ｡

潤は難しいお年頃だ｡

なんのかんの言っても、おれは今まで潤一筋で生きていた｡

この難しい時期に、しかも雅紀に告白されたなんて知ったら

潤のヤツ、グレちまわないか？

｢不潔だよ、翔さん!｣

とか言って嫌われたりしないだろうな？

｢智さんパネェッスー
マジ神ッスー
ホントは俺、智さんに憧れてたんスヨー｣

とか言って、

急に智君に懐いたりしないだろうな？

｢翔ちゃん…、お願いだよ｡
受け取って……｣

ハゲ親父達が慌てて部屋から出ていく｡

どうする？

雅紀の純真さを踏みにじるのも忍びない｡

あぁ、誰か……

頼む!!

おれをこの状況から助け出してくれっ!!!