ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ31)

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03.親子鷹？/S ページ31

朝はいい｡

朝はいいんだよ｡

朝は起きたてでご機嫌さんだから、潤は外も中身も天使なんだ｡

だけど問題は夜｡

お昼寝タイムが一回減ったせいで、睡眠リズムがすっかり狂ってたその頃

潤は夜が更けていく毎に凶暴なお子様に変身した｡

丑の刻になろうとしても

潤は何度も欠伸して眠たそうに目を擦りながら、絶対に寝床に行こうとしない｡

今日は大工の玄さんが廃材で作ってくれた、積木でまだ遊んでいたいらしい｡

｢なぁ、もう夜も更けた｡
そろそろ寝ようよ｣

｢やっ！
これちゅる!｣

眠たいからイライラする｡

だけど遊びたいから眠れない｡

眠たいから遊べない｡

結果イライラする｡

そんな毎日がもう、何日続いてんだ？

｢やん!
これやんっ、やんっ、やんっ!!｣

癇癪起こした潤が積み上げた積木を投げ始めた｡

もう眠たさの限界だ｡

｢じゅーんー、そろそろ寝ようなー｣

頃合いを見計らって、潤をおぶい紐で背中にくくりつける｡

｢やん、いやっ、しょーたん、しょーたん!
うえっ、ふぇっ、うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!｣

｢おー、ヨシヨシ｣

眠たさの限界を越えて全部にイラつくのか

毎晩こんな調子で

おれは真夜中の江戸の街を、

火がついたように泣く潤をおぶって月を眺めながら彷徨うんだ｡

｢今日は月がまた綺麗だなぁ｡
なぁ潤、見てみろよ｣

｢すぴー、すぴー｣

｢ふふ、やっと寝たか……｣

そりゃこんなチビに振り回される生活｡

先が見えない分嫌気がさす日もあったさ｡

でもそのたびに思い出されるのは、長屋の女達の言葉だった｡

“潤ちゃん、お母さんいないんだろ？

可哀想にねぇ｡

アンタが女親だったら、乳房含ませてやれるのに｡
そうすりゃあんな辛そうに毎晩泣かせずに済むのにねぇ……

翔ちゃん｡
いつまでもじゃないから｡
アンタ、潤君のこと堪忍して、可愛がってやらなきゃいけないよ？”

｢……言われなくっても判ってるよ｣

おれの背中で心底安心して眠る小さな潤｡

時々自分の指ちゅぱちゅぱしながら眠る潤に、小さな声で話しかける｡

｢潤｡
お前はおれが絶対に育ててやるから｡
安心しろ｣

そうやって今まで育ててきた｡

今は反抗期に入って更に潤は難しいお年頃だ｡

なのに｡

｢翔ちゃん……｣

｢ま…さき…？｣

おれは今、熱っぽい瞳でおれを捉えて

真っ赤な薔薇の花束を差し出す雅紀に困惑してる｡