ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ26)

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56.近くて遠かったアナタ2/N ページ26

オレにとってこの人は、一体なんなんだろう？

翔さんは潤君にとって、紛れもなく親のような人だけど

アンタは一体、オレのなんなんだろうね｡

親子とも違う｡

大人として、頼る相手ってワケじゃない｡

兄弟みたいな感覚ともちょっと違うし

友人だと思ったこともない｡

一緒にいるのが自然で、

空気みたいに当り前な存在で

でも

困ることがあると、必ず手を差し伸べてきてくれたアンタ｡

体に流れる赤い血よりも、ずっと深いえにしで結ばれているような

智｡

アンタはオレにとって、不思議な立ち位置にいる存在｡

｢まぁ、いっか｣

｢ニノ…？｣

｢なんでもねぇよ｣

既存の概念でオレと智の関係が説明できないなら

これからこの人とオレで、オレ達だけが分かち合える

二人だけの絆を作っていくのもいい｡

コレってもしかして、牡丹さんの置き土産かな…？

今日はなんだか今までより

智という存在に、近づいたような気がする……

もぞもぞと顔上げた智が、口をへの字に曲げて難しそうな顔してる｡

｢智…？｣

｢……おまじない｣

｢へっ…？｣

｢今日こんな目に遭ったのは、きっとおまじないしてなかったせいだよ｣

｢……はい？｣

｢ホラ、ニノ、今日は熱出して倒れちゃったから｡
俺、おまじないしなかった｡
だからあの女に襲われたんだ｣

｢……………｣

｢これからは二度とニノがこんな目に遭わないように、くっきりはっきり俺のシルシを……｣

｢絶対ヤだし死んでもヤだしそんなことしたら二度と口利かないどころか目ェ合わせないし｣

ふっと空気が緩んで｡

やっと智の口元にいつもと変わらない柔らかい笑みが浮かんだ｡

声上げて笑った智が一度だけ空に輝く月をその瞳に映して

｢俺らも探しに行こっか｡
せめてあの女が、俺達がいるこの世界で寂しい思いをしなくて済むように……｣

｢………うん｣

オレに手を差し伸べる｡

｢なんだよ｡
オレ以外どうでもいいなんて言ったって、なんのかんので気にしてるんじゃん｡
牡丹さんのコト｣

｢違うよ｡
そんなんじゃないよ｡
あの女、どういうわけかニノに……｣

｢……？
オレにどうしたって？｣

｢……ううん、なんでもない｣

｢ヘンなヤツ(笑)｣

さっき三人が歩いていった石畳を、智と一緒に踏みしめる｡

辺りを静銀に染める月が、天頂へと昇ろうとしてた｡