ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ21)

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51.遥かなる泡沫/O ページ21

｢なに…？
コレ雪と彼岸花…？｣

天空に向かい

一斉に舞い上がる朱い彼岸花と真っ白い雪｡

世界には俯いたままの女と俺｡

｢ニノ…？
翔君、相葉ちゃん…？
潤君も、みんな何処行ったの？｣

たった二人きり｡

誰もいない｡

音もない、ただ真白に染まる雪と

彼岸花が舞いあがる世界……｡

無音だった世界に空気を飲む気配がして

目の前の女が俺を呼んだ｡

｢智………｣

｢お前…、なんで俺の名前を……｣

ゆっくりと顔を上げた女に、艶やかな笑みが浮かぶ……

｢え？えっ…？
なんで？
なんで…なの…？｣

｢智………｣

色素の薄い愁いを帯びた瞳｡

薄くて赤い唇｡

緩くカーブした頬のライン｡

よく見知った顎のほくろ……

｢ニノ…？｣

そう呼びかけても答えることなく｡

｢智………｣

女は宝物みたいに、ただ俺の名を呼び続ける………

・

違う

違う……

そっくりだけど、違う……

ニノはこんな

寂しい笑い方をするヤツじゃない……

｢……お前は違う｡

お前、ニノとそっくりだけど、お前はニノとは違う｡
アイツはそんな寂しそうな顔して笑わない｡

俺ならニノに、そんな笑い方させない｣

｢……アナタは違う｡
アナタはアイツじゃない｡

アイツはもっと、狡くて弱い男だから｡

でも、その名を呼べて嬉しかった｡
また呼べたことが幸せだった……

坊やに伝えて……
『ありがとう』って………｣

小さく微笑んだ瞬間、彼女の輪郭が儚くほどけて

無数の牡丹の花びらとなり

雪と彼岸花達と一緒に、天へと還っていく……｡

｢お前、そんな寂しそうに笑って……
元の世界に戻っても幸せじゃねぇのか…？｣

答える声はもう何処にもない｡

ただ天空を仰ぎ見ていた俺の眼に

牡丹の花びらが夜空の闇に消えて見えなくなる｡

最後の“朱”のひとひらが、消えて見えなくなる｡

俺はただそれを、見届けるしか出来なかった……