ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ3)

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33.愛しい者の為に/O ページ3

｢おっと｡
さっきみたいにここを貴女の“場”にすると、こっちとしては厄介なんで｡
今回はお先に失礼させて貰いますよ？｣

艶やかに微笑んだ翔君が煙管を咥えると

白い煙が辺りを満たし

“道”を示して月と星が輝く空へと立ち昇っていく｡

｢この場に揺蕩う気の流れ、音の流れ、生命の流れ｡
今、白煙が“自然の道”を示した｡

生きとし生ける者全て｡
命在る者は、清め過ぎた気の中では生きられない｡

貴女、聞いたことあります？

“白河の清きに魚も住みかねて…”ってヤツ｡

これでもう、貴女は自分に好都合な結界は作り出せない｡
一切の不浄を清め、不自然に浄化した気で、この場を満たすことは出来ない｣

ふわりと魅惑的な笑みを浮かべ、

翔君はまた煙管から紫煙を吐いた｡

｢これで条件は五分と五分｡
智君にも貴女にもフェアな状態だ｡
さぁ、思う存分闘って下さい｣

｢え～!?
オレと潤君は出番なしなの～!?｣

｢翔さん!!
なに呑気なコト言ってんの!!

ニノが危ないって時に!!!｣

煙管から立ち昇る煙を物憂げに見つめていた栗色が

相葉ちゃん達を捉えた｡

｢当然でしょ？
相手はご婦人なんだよ？
男三人で女性一人を相手にするなんて、多勢に無勢でしょうが｡

さっきは彼女の結界の中で悪戦苦闘してたからさぁ…
智君のコト助けてあげたけど｡

……ねぇ？
一人で大丈夫だよね？｣

揶揄するような響きを含ませ

翔君は極上の笑みを綺麗な顔に乗せると、俺に向き直った｡

｢……当り前でしょうが｣

彼女の白く濁りきった数珠には

意味は分からないけど、梵字が刻まれている｡

……あの女｡

遊女みたいな格好してるクセにあんなもん携えて｡

面倒なことに陰陽まで使いこなす｡

……腹が立つ｡

目の前の女の全てにイライラする｡

この女のせいでニノがあんな苦しそうに泣いたのかと思うと

滅茶苦茶に切り刻んで壊してやりたくなる……

｢しぶとく食い下がったけど｡
たかが生き霊ごときにもう後れは取らない｡

終わりだよ、女｡
ニノは返して貰う｣

｢……この子は逃がさない｡
絶対に渡さない｡
アイツを探し出す為にこの子は貰い受ける｣

女の手に握られた数珠の白が空気を震わせた刹那

刃の切っ先で朱い影を捉えた｡