ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ20)

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50.辿る小路/O ページ20

朱い女は静かにその場に座ると、両の掌を合わせる。

さっきまでコイツから噴き上がっていた禍々しさは消え失せ

小さな影は、やけに頼りなく儚い印象を与える｡

目の前の女を見据える俺を

ニノの薄茶色の瞳は真っすぐに捉え

絶対に視線を外そうとはしない｡

……初めて会った時は、まだ赤ん坊だった｡

次に会った時もまだほんの小さな子供で

ぐずぐず泣いたと思ったら、俺の腕の中ではしゃいで

そのうち、眠っちまってたっていうのに……

一歩も引こうとしない

強い意志を滲ませた薄茶に飲まれた｡

今まで一度だってそんなふうに思わされた相手はいなかったのに｡

なんの力も持たない非力な筈のニノに

コイツには絶対に勝てないって思わされた｡

背中にこの女を隠して、必死で守ろうとしたニノの顔は

俺が知ってる子供の顔じゃなくて、『男』の顔をしてた……

いつまでもガキだと思ってたのに、

いつの間にあんな顔、するようになったのかな……

｢んふふ、翔君と同じ｡
俺も歳とったってことか｣

……刀の切っ先をぴたりと般若の面に合わせる｡

｢迷わず帰れよ｣

小さく頷いた女の顔に被せられた面｡

人が心に潜ませている“業”というものを

そのまま形にしたようなソレを

ゆっくりと下から斬り上げた瞬間

｢えっ…？｣

視界が一瞬で切り変わって

真っ白な雪と、

真っ朱な彼岸花が

一斉に天空に向かって舞いあがった……