ぼくらのおうち｡4～Mｙ sweet home～/気象ﾊﾟﾛﾃﾞｨ (ページ11)

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41.　最強凶器発動｡/S ページ11

｢なぁ…
アンタなら……

絵に命を吹き込むアンタなら…!
命を絶つんじゃなくて、もっといい方法が見つけられる筈だよ!?

お願い…、智｡
奪うんじゃなくて、この人に与えてあげて……

救ってあげて欲しいの……｣

｢そんなこと…言ったって……｣

さっきまで厳しい顔してたってのに｡

今の智君は眉尻を思いっきり下げて、なんとも情けない顔をしてる｡

｢ねぇ…、お願い……｣

念を押すようなニノの一声に

閉口した智君が、心底困ったように煌々と輝く月を仰ぎ見た｡

無自覚って怖い｡

論理としてはメチャクチャじゃないか｡

智君は確かに強い妖気を持つ物の怪だけど

なんでも出来るスーパーマンじゃない｡

だけどニノは

頭っから智君が自分の願いを聞き届けてくれるものとして

無理難題をふっかける｡

しかもだ｡

ニノの叫びは、絶対に自分の意志を曲げない強さを纏い

クリアな薄茶の瞳はうるうるに潤んで

その瞳に見つめられた者が

つい願いを聞き届けてやりたくなるような、甘ったるさを滲ませる｡

アレだな、アレ｡

秘儀『おねだり』だ｡

ニノに極甘の智君にとって

完全に凶器じゃん｡

｢なによ、翔ちゃんってば｡
ニマニマしちゃって。
やっぱ飛縁魔(ひのえんま)だわ、アナタ｡

大ちゃん困っちゃってるのにさ｡
楽しんでるでしょ、今の状況｣

｢そう見えるか？｣

｢見えるよ｡
いや～ね～
親友が困ってるっていうのに｡
この人、性格悪いったらないよ｣

｢人のこと言えるかよ｡
お前だって涼しい顔してるじゃないか｣

｢オレはアナタみたいに、あからさまに顔に出してないよ｡
『あんな智君初めてだ』ってね｣

心底呆れたように、わざとらしい溜息をついた雅紀に苦笑を漏らす｡

かなり切迫した場面なのに｡

なかなかどうして

おれは事の成り行きを雅紀が言う通り楽しんでる｡

だってそうだろ｡

あの人の畏怖には誰もがひれ伏す｡

大天狗様に跡目と認められ

百鬼夜行をも成し遂げるほどの力を持つ烏天狗に

誰も本気で逆らうヤツなんていないのに｡

その智君がだ｡

人間の、しかも子供の気迫に飲まれてる｡

これを面白がらずに、何を面白がるって言うんだ？

ついつい高みの見物、決め込みたくなるだろ？

1,000年以上の付き合いになるけど

あんな困り切った顔した智君は初めてだ｡

さぁ、智君。

ニノのおねだりに貴方はなんて答えるの？