06.拗ねてないもん/N ページ7
｢ははっ、ニノちゃんってばこういう時、結構顔に出易いよね｡
ひょっとして拗ねちゃった？｣
｢べ、別に拗ねてないし!｣
食パンかじって俯いたオレを見て、相葉さんと智は二人して笑ってる｡
｢やっぱニノって可愛い〜んだよねぇ｣
一瞬で耳まで熱くなる｡
ふわふわオレの頭を撫でる智の手が無性に気恥かしくて
思わず噛みつくように否定した｡
｢//う、うるさいよ!!
智に可愛いなんて言われても全っっ然嬉しくない!!｣
くっそ！
もう高校生なのに、智のヤツ、オレのことガキ扱いしやがって｡
でもなんでかな……？
智に頭を撫でられると、なんか懐かしくなるんだよね｡
そんなことあり得ないのに｡
智の年齢から考えたって、現実的な話じゃないのに｡
“いい子だね、和………”
でもオレ、
凄く小さかった頃、この手に頭を撫でて貰ったような……
ずっとずっと小さな子供の頃から、智を知ってるような………｡
何かいつも大事なことを
智の手に思い出しそうになるのに………
｢…ノちゃん、ニノちゃんってば!!｣
｢……へっ？｣
｢どうしたの？
ぼーっとしちゃってさ｡｣
｢？えっ？
う…、ううん、なんでもない｡｣
｢それより時間大丈夫？
こんなのんびり朝飯食ってていいの？
学校、そろそろまずいんじゃない？｣
相葉さんに促されて、じいちゃんが大事にしてたでっかい柱時計をみると……
｢うっそ、もうこんな時間!?
マジで遅刻しちゃうよ!
二人ともちゃんと食器洗っといてね!?
じゃ、行ってきます!｣
｢｢行ってらっしゃい｣｣
残りの食パンを大急ぎで口の中に詰め込んで
テーブルの脇に置いておいた鞄を抱えると、玄関出て自転車に飛び乗った｡
｢マズイマズイ!
マジで遅刻だよ!!｣
さぁ…と吹き抜けた風が焦ってるオレの髪をかまい
欅の緑達をさわさわと揺らした｡
見上げた視界に飛び込んだ木漏れ日が眩しくて、思わず目を細める｡
じいちゃんの欅の木｡
子供の頃からずっと、オレを見守ってくれている特別な欅の木………｡
｢じいちゃん…行ってくるね｡｣
欅の緑に小さく手を振ると、またざぁ…と葉擦れの音がする｡
自転車を漕ぎ出すオレの背中を
『いってらっしゃい』って押してくれてるみたいだった｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
