鬼舞辻無惨の嫁

19話 ページ20

A『まあ……喜べる内容ではなかったですけれど。あなたのことをようやく知れた気がして……はしゃいでいるんです』

無「ｸｽｸｽ)はしゃいでいるようには見えんがな」

A『ﾌﾌｯ)嬉しいですよ、本当に。話してくれて……今まで通り、夫婦でいられることも。あなたの隣で支えられることも』

無「そうか…」

A『はい』

無「………気持ちを伝えるためとはいえ、今日は本当に随分話すな」

A『……父を急に失って……きちんと、伝えられていないことが山ほどあるんです』

A『縁談のときには口うるさくて、よく衝突したり……気の合わないことも多かったですけれど』

A『私にとっては、とてもいい父親でした。…感謝の気持ちでさえ、伝えきれていないんです』

A『……今日、鬼に襲われた時……死ぬって思いました。それで、思ったんです。人間、本当にいつ死ぬのか分からないんだなって』

A『当たり前のことですけれど、なかなか実感するのは難しい。……それを父の死と自分の死で2度も見を持って体験しました』

A『ﾆｺｯ)ですから、伝えられるうちに伝えておこうと思って』

無「そうか」

A『はい』

無「……私が、怖くはないのか？」

A『ﾌﾌｯ)全くと言えば嘘になるかもしれませんが……怖くないですよ。さっきも言いましたけど、あなたは……私にとっては、優しい人なんです』

無「……初めてだな。そう言われたのは」

A『ｸｽｸｽ)それはそうでしょう』

無「………ｲﾗｯ)おい、こっちへ来い」

A『？』

すると、いきなり両頬を伸ばされた。

A『………いひゃいです』

無「知っている」

A『……いひゃいんですけど』

無「知っている」

真顔で引っ張ったかと思うと、いきなり笑い出した。

無「ﾌｯ……ｸｸｸｸｯ……)いつになく不細工だな」

A『ｲﾗｯ)あなひゃがひっひゃってるからでひょうが！(貴方が引っ張ってるからでしょうが)』

無「え？聞こえんな」

A『ｲﾗｯ)』

無「！？」

苛ついたので、せめてもの仕返しに全く同じことをやる。

無「おい、はなひぇ(離せ)」

A『ひぇ？なにいっひぇんでしゅかぁ？(え？何言ってんですか)』

無「ｲﾗｯ)」

A『ｲﾗｯ)』

無「はなひぇ(離せ)」

A『こっひのしぇりふでしゅ(こっちのセリフです)』

20話→←18話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す