妄想最盛期 (ページ9)

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副作用は次第に強くなっていった。
最初は眠くなるだけで済んでいたが、頭痛がするようになり、吐き気も感じるようになり、遂に、髪にまで影響を及ぼすようになった。

彼に嫌われたくない。可愛いって思われたい。

その一心で、可愛くなる努力を続けた。

ファンデーションで白いスベスベな肌を作り、コンシーラーで気になるところを必死に隠す。
オレンジの秋限定のアイシャドウで目元を華やかに。睫毛はしっかり上げて。マスカラも塗って。
赤いツヤツヤな唇を作ったら、髪を巻く。
頭に合っていないウィッグを隠すため、臙脂色のベレー帽を被る。
うん。今日の私も可愛い。

鏡の自分に微笑み、愛する彼の元へ向かった。

10月6日。
それは彼の誕生日。
プレゼントは買っていない。

「お誕生日おめでとう！」

近くにあった公園で、のんびりと過ごす。
冷たい風は、彼といたら気にならなかった。

「誕生日プレゼントあげるから目瞑って！」

「え〜どうしても？」

「どうしても！」

そう言うと、すんなり閉じられた彼の目。
さあ、意を決する時が来た。

「──────ｯ」

私からの、初めてのキス。
唇を離すと、彼は驚いたように目を開いた。

「えへへ、お誕生日おめでとう。」
「これが私からの、最後のプレゼントだよ。」

まるで何を言っているのか分からない。

彼は、そんな顔をしていた。

この日、私は死を直感していた。
でも、それに抗おうとは思わなかった。
彼と過ごした日々を綺麗な想い出にして、そのまま死ねるなら本望だ。

私は、彼との連絡手段を一切絶った。

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あれから彼は、毎年10月6日をあの公園で過ごすようになったようだ。
今日は、彼の23回目の誕生日だ。
彼の心の中で私が生き続けられていたら、嬉しいな。

──今も、彼女は俺のことを好きでいてくれているのだろうか。

不安そうに彼が呟いた。

──当たり前でしょ？

私は彼の耳元に囁いた。

冬を越えて、また逢いに来るね。

サラギの灯『冬眠』

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私は四季の中で秋が一番好きです(全力フォロー)(事実ですけど笑)。
作者です。
私は「サラギの灯」と「シキナ」は姉妹曲だと思ってます(実際にどうかは存じ上げないんですが…)。
だから、今回はテーマの曲は違えど、内容は同じものにしました。
楽しんで頂けたら幸いです。