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そう言って来た道を戻っていく彼らを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
適当に盗んできたものはバッグだったようだ。
これじゃあ僕の生命には役立たない。そう思い捨てようとした時。
「ねえ。」
後ろから声を掛けられる。
「それ、私にちょーだい。」
振り返ると、そこには先程助けてあげた女の子がいた。
「きみ、いっつも盗んで生活してるの？」
「うん。」
「なんで？」
「だってゴミ箱漁りたくない。汚いじゃん。」
それは、彼女なりのプライドなのだろう。
彼女にバッグをあげる代わりに、食料を半分分けてくれた。
「ねえ、名前つけてもいい？」
親のいない、モノ扱いして育てられる僕らに名前なんてない。
名前を付け合う関係は珍しくないが、その人の傍を離れられなくなるのが暗黙の了解。
「いいよ。」
「じゃあ、A。」
「A…いい響き。」
「僕にもつけてよ。」
「うーん…。じゃあ〇〇。」
「うん。僕は今日から〇〇だ。」
そうして、僕らは消えない契りを交わした。
それからは毎日が楽しくて仕方なかった。
色んなお話をして、一緒に盗みを働いて、一緒に飯を食べた。
寝る時間も惜しいくらいで、僕はAが眠りに就くまで話し続けていた。
ぐっすり眠っているAを眺めてから寝るのが日常になった。
たくさん外に出るようになった。
Aが連れてって見せてくれる景色はどれも美しくて、まちで生活してただけの僕には新鮮だった。
透き通る空気にお腹が満たされる。
Aと一緒にいるだけで、僕は楽しくてしょうがなかった。
大人になりたくなかった僕らは、毎日無邪気に遊んでよく寝た。
汚い大人になりたくない。ずっと子どものままでいたい。
そんな気持ちが、僕らの成長を妨げる。
子どもってなんて素敵な時間なんだろう。
ROCK'N'ROLL SWINDLE 『しあわせ』
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年1月18日 17時
