続 初恋はどんな味？ ページ32
※タイトル通りです。
今回、彼の苗字を設定できるようにしました。
設定してからお読み下さるとより楽しめると思います。
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あの日から数年経った。
私は美術の専門学校を出て、今はデザイン系の仕事をする会社に就職している。
右手の薬指には、彼とのペアリング。
あの日、彼は私に以前の態度を謝りに来た。
「ほんとごめん。俺、あの時周りの目気にしてて…。許してくれとは言わない。その代わり、責任を取らせて欲しい。」
「責任…？」
「………俺、ずっと前からAのこと好きだった。一緒に帰らなくなってからも、話すことがなくなってからも、高校生になって会わなくなってからも、Aのことで頭がいっぱいで、Aのこと考える度に胸が苦しくて、どうしようもないくらい想いが募って、俺、Aが好きだったんだなって気づいた。だから、俺と付き合って下さい。」
「……え、えっと、」
「…なーんて、今更言っても遅いよな。Aかわいいから彼氏なんてとっくに居るだろうし。……あ、彼氏じゃなくても好きな人くらい居るよな、ごめん。」
「…ほんとだよ。私だって好きな人くらい居るよ？もうずーっと前から。」
「……だよな！じゃあ今のはなかったってことで！」
眉を八の字にして、困ったように笑う彼の顔には、哀しみの色が滲んでいた。
…もう、これだから鈍感は困る。
「ちょっとまって、何でそうなるの？」
「え？だってお前ずっと前から好きな人いんだろ？俺はそいつには敵わないよ。」
「…そう、ずっと前から好きなの。今身につけてる、そのキーホルダーを買うずっと前からね。」
「……、それって、」
「ほんと、何で分からないのかなー。この坂を一緒に競走した時にはもう好きだったのになー。」
「…つまり、Aが好きな人って」
「………遅いよ、バーカ。」
こうして、私の初恋は実った。
だが、交際の道は厳しかった。
当時高校3年生だった私たちは、家が近い訳ではなかったので、ただでさえ会える頻度が低いのに、お互い受験生ということもあり、会う時間がとれなかった。
代わりに、毎日連絡を取り合って、休日は通話をした。
せめて夏休み一日くらいはデートしようということになり、二人で海に行った。
夕焼けを受けてキラキラと光る水面は、この世のものとは思えないほど綺麗だった。
いざ受験に受かってみれば、お互いの学校はさらに遠くなってしまった。
新幹線一本で会うことができず、かなり淋しかった。
続
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年1月18日 17時
