レール ページ30
朝起きて、適当にご飯を食べ、身支度をし、家を出る。
駅まで歩き、満員電車に揺られ、8駅先の会社がある駅で降りる。
そこからさらに歩き、タイムカードを通し、席に着く。
PCを立ち上げ、キーボードをカタカタさせる。
入社して5年。この生活にはすっかり慣れた。
俺の家は、親が二人とも大学を出ていること、俺が長男なことから、小さい頃から大学へ行くよう言われていた。
折角行くなら上の大学が良いことは目に見えているから、俺は毎日勉強した。弟と妹がいたから塾に行ける金はなく、家や図書館で勉強する日々だった。
俺と対照的に、
「やっぱりお前はしっかりしてるなぁ。アイツらも兄ちゃんを見習わないかなぁ。」
父の口癖が、頭にこびりついて離れない。
俺だって、自由に生きたかった。
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…………………………自由？
自由って何だ……？
俺だって勉強時間を削れば、
しかし、勉強しかしてこなかった俺に夢は疎か、大切にしたい友達さえいる筈がなかった。
そんな俺は、本が友達と言えるほど本を読むことが好きだった。小説も良いが、評論や哲学を読んで色々と考えることが好きだった。
そんな中、俺の人生のことを言っているのでは？と思う本に出会った。
その本は、今の学校教育は子どもの個性を奪い、夢や目標を与えない。社会に出てから替えの効く人間を育てていると言っていた。
きっと、俺もその人間の一人で、社会に出たら、いつ首を切られてもおかしくないんだろうなって思った。
一体、この会社に希望を持って入社してきた人が何人いることだろうか。少なくとも、俺の周りにそういう人はいない。
やりたいことがない、他の人と替えの効く人間である俺って、この
そんなことを考える暇もないほど与えられる仕事の山。
休日は、平日の疲れを取ることで精一杯。充実した一日を送ることなんて夢のまた夢だ。
ふと、
自由って、何なんだろう。
汚れなきSEASON 『レール』
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年1月18日 17時
