CHEER ページ24
カキーンと響く金属音。飛び交う力強い声。照りつける日差し。誰かが走った後の土煙。
あぁ、私は今日も生きている。
私は野球部のマネージャーをしている。理由は、生きていると感じたいからだ。
野球に秘められている魅力の数々は、私の生命の源と言ってもいいくらいだ。それくらい野球が好きで、近くで感じたいと思い入部した。
ここの野球部は、所謂強豪校とまではいかないが、そこそこ強いと思う。
しかし、選手のメンタルが弱い。それも主将まで。
褒められれば波に乗り、大会では準決勝まで進めることもしばしば。しかし、調子に乗りすぎて怒られると、初心者かと思うくらい下手になる。
つまり、彼らをいかに奮い立たせるかが大事なのだ。それは、マネージャーである私の仕事でもある。
そろそろ、高校野球の目玉である甲子園の選抜大会が行われる。この学校は、まだ甲子園に行ったことがないらしい。
ならば、私の手で行かせるしかあるまい。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り、いよいよお待ちかねの部活の時間だ。
部室棟からボールとベースを運び、ベースを設置。その後、みんなの水を汲む。
これが、部活前のルーティン。マネージャーは、みんなが来る前から仕事が始まるのだ。
甲子園選抜大会まであと1週間。
スタメン選手が決まり、控えの選手も試合に出るためにと、基礎練から力が入る。
「佐々木！弛んでるんじゃないかー？もっと声出せ！」
「中村！お前腕がしっかり使えるようになったな、その調子だぞ。」
「坂井！もう少し力抜いたら良くなると思うぞ！」
先生の指導にも熱が入る。
私は、この一体感が大好きだ。
それから1週間はすぐ過ぎた。今日から大会が行われる。
「まずは初戦突破だ。相手はそんなに強いとこじゃないから、お前らなら勝てるぞ！最初だからって油断せず、全力でいけ！」
はいっ！！と今まで聞いた中で一番力強いんじゃないかって思うような声で返事をした。
「では、マネージャーからも一言。」
急に振られたが、私が言えるのはただ一つ。
「私は、皆さんの努力を誰よりも近くで見てきました。努力は裏切りません。私が保証します。なので、精一杯戦って下さい！！」
試合開始のサイレンが鳴る。
私たちの戦いが始まった。
空が青空であるために 『CHEER』
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年1月18日 17時
