シャムロックの花。第四輪

百四十つ葉 ページ3

そう言ったジェロニモは霊体化。

程なくして立香達の前に光を纏って再度姿を現した。

「目が覚めたようだね、藤丸立香。体調はどうだろうか」
「うん。机に突っ伏したまま寝ちゃったから少し身体が痛いけど、眠気も体力も気力も回復したよ。ありがとう」
「気にしないでくれ。君まで倒れられたら彼女の機嫌が更に大変になりかねない」

振り返って中を覗くよう見たジェロニモの耳には傷の深さに嘆く看護師と、痛がる患者の声が室内から聞こえてくる。

もちろん立香やマシュ、エウェルの耳にも聴こえている。

「それで、どうしてナイチンゲールがあんなに怒っているの？」
「それは少々私が彼女を含めて君達に対して嘘を吐いていたからだ。あのまま君達を彼の前に出せば確実に休憩をするよりも先に治療を専念すると判断したはず。ゆえに私は君達に時間の猶予はある、と嘘を吐いた。まぁ、彼の生命力が凄まじいので、ある意味嘘ではないかもしれないのだがね」

苦笑いを浮かべながら説明をするジェロニモに対し、再度立香はお礼を言った。

人である立香に対して明らかにジェロニモは気遣いをしていた。

カルデアの事情は詳しくは知らないが、それでも星や精霊がジェロニモに対し藤丸立香という青年が命運を握っていることを伝えている。

彼が倒れれば本末転倒。

この時代の異常も解決できなくなってしまう。

そのためにジェロニモは一人、ナイチンゲールの怒りを買ったのだ。

「気にしなくていい。どの道、遅かれ早かれ彼女の怒りを買うことはわかっていたからね」
「でも、俺のために気を使ってくれたのだから、ありがとう。ジェロニモ」

ふ、と笑ったジェロニモは立香の感謝を受け取った。

だがしかし。

「いたたたたたたたたッ!! 頼むからッもう少し優しくッ〜〜〜〜〜」

聞こえてくる悲痛な叫び声に全員が全員苦笑いを溢していた。

遠回しな入室拒否を受けてしまった手前、中に入ることは叶わないゆえに外からそっと覗くことしか立香達はできない。

ジェロニモを交えて治療室となっている中を再度覗けば悶えるように手足をじだばたと動かしているのが見えている。

「じっとしなさい！ 治療に専念させない気ですか」
「余は我慢強い方だが、こうも痛いとじっとできる訳なかろう！」
「男の子なのですから我慢なさい」

ナイチンゲールの背中が被っているのでよくわからないのは変わらないが、非常に痛そうな声だ。

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