※残酷流血表現有 ページ15
ただ幸せを噛み締めていただけに違いない。
そう思うと、鏡の中の彼女は一粒の涙を左目から溢していた。
そっと彼女が右手で右目元に当てると水滴が付着する。
ーーあぁ……。
そうか、悲しいのか。
彼女は理解した。
まだ彼のことが好きなのだと、彼女は理解したのだ。
だが、鏡の中の彼女はもう涙を流していない。
ただ、ただ、この自覚した恋心をまた誤魔化すだけ。
前もできたのだ、今回もできないはずかない。
ーー？
ふと、城内が騒がしいことに彼女は気付いた。
遠くだが、複数人の声が聞こえてきているのだ。
窓の外を見るが異変はない。
いつも通りに見える。──否。
いつも通りに見えることがおかしい。
彼女の結婚式のため侍女を始め、彼女の父親に仕えている者達が忙しなく城内を歩き回ったり警護に勤しんでいたりしなくてはならない。
何か、あったのだ。
彼女の賢い頭は何があったかまでを考える。
どこかの誰かから攻撃を受けている、どこの誰かからなのか、救援は呼んでいるのか、何を交渉すれば攻撃を止めてくれるのか。
現時点でわかっていることを並べてみるが明らかに情報不足が否めない。
ーー……。
彼女は立ち上がった。
圧倒的に情報が足りないのなら、埋めるしかない。
となれば、部屋を出ていくしか方法はない。
それに出ていって戻ってくる気配のない侍女達も心配なのだ。
装飾によっていつもより重たい身体を動かし部屋を出ようとしたところ、先に誰かが入ってきた。
彼女の父親であるフォルガルである。
フォルガルは彼女にはしがみつくと声が枯れんばかりに叫んだ。
ーー逃げるんだエウェル！
ーーどういうことですか、お父様。誰が攻め込んできているのですか。
ーーいいから逃げるんだエウェル！ 手塩に掛けて育てたお前をあんな奴に渡してなるものか！ あんな奴に渡すくらいならいっそ──。
ドス、という音が部屋の中で響いた。
彼女の目の前にいた父親が、目を大きくひんむき、口の端から赤く色付いた液体を垂れされているではないか。
ーーおいおい、約束を反故にするのはちーっとばかし道理が通らねぇんじゃねぇか？ フォルガルさんよぉ。
彼女の父親の後ろから第三者の声がする。
聞き覚えはない。
崩れ落ちる彼女の父親によって、第三者の姿が彼女の目に入った。
それは、彼女がずっと待ち焦がれていた少年と同じ特徴を持つ、青い髪に赤い目を持つ青年だった。
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翔べないペンギン(プロフ) - 灰かぶりさん» コメント及び応援ありがとうございます。この辺りの話を確りと考えていなかったためにかなりスローペースでの更新になりますが、気長にお待ちいただけると非常に嬉しいです。灰かぶり様も最近寒暖差が大きいですのでお身体をご自愛ください。 (2023年2月8日 18時) (
レス) id: 59a8ce4908 (このIDを非表示/違反報告)
灰かぶり(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました。言葉遣いが丁寧で、読んでいてとてもわくわくしました！Fate関連の作品は少ないですが、これからも楽しみにしております。お身体にお気をつけて。応援しております！ (2023年2月8日 10時) (レス) @page17 id: 54c03ac678 (このIDを非表示/違反報告)
翔べないペンギン(プロフ) - 夢プリンさん» 前回に続き今回もコメントをありがとうございます。御存知でしたか。仰るとおり、クー・フーリンの結婚のお話っぽくしております。自己解釈・捏造・御都合なんでもこいな展開になりつつあるうえ更新もまばらになると思いますが、完結までお付き合いいただけると幸いです (2022年11月14日 18時) (レス) id: 05fbcee79b (このIDを非表示/違反報告)
夢プリン(プロフ) - うわあぁぁ！！クー・フーリンの結婚ですね！めっちゃ好きです！！ (2022年11月14日 12時) (レス) @page15 id: 0c2c417461 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2022年8月28日 0時
