百三十九つ葉 ページ2
「そうですね……。端的に言えばキャスターが、バーサーカーの怒りに触れてしまったようなのですよ」
そういってエウェルは目線を立香とマシュの二人から少し左へとずらした。
エウェルの視線の先には立香達がいる建物から見て、真向かいの左四つ隣。
野次馬とまではいかないが、それでも五人程の武装兵が心配そうに開け放たれた窓から中を覗いているのが見える。
兵と兵の間の、僅かな隙間から覗く赤色は窓の中にある。
その色を纏うのは、今いるメンバーの中ではナイチンゲールただ一人のみ。
「心臓を半分
窓の向こうから聞こえてくるナイチンゲールの怒号と、それに混じって痛がるような少年の声が。
今の内容で全てを察した立香は身体も建物の外へと出した。
「行こう、マシュ、A。ジェロニモが困ってるだろうから助けないと」
「わかりました、先輩」
「はい」
ようやく視力が慣れたのだろう、立香を先頭にマシュ、エウェルと続く。
五、六人の野次馬の間をくぐり抜けて、開かれているドアにノックを四回。
「入っても大丈夫？ ナイチンゲール」
「そこから動かないようでしたら入室を許可します」
「それって遠回しの入室拒否だよね!?」
立香の方を向くことなく、手元に集中しているらしいナイチンゲールの背中を扉越しに見る。
苦笑いを浮かべているジェロニモと、痛みを訴えるナイチンゲールと、彼女の背中より向こうに寝転ぶ誰か。
「いだだだだだ！ 看護師よ！ 誰かきているのか！」
「御安心を、接触させないように配慮しておりますので」
「もしや余に対する見舞いか？ ならば余自身が対応せねばなら痛い！ 痛い！ 頼むからもう少し優しくできないのか！」
「痛みは生命活動の証ですので御心配無用です」
ナイチンゲールの赤い制服とは別系統の赤い髪と褐色の肌が背中越しに覗いている。
ついでにいえば、ナイチンゲールとその声の主がどことなく似たような声色なのだが、そこは偶々だろうと立香は判断した。
そっと佇むジェロニモに視線を向ければ立香が見ていることに気付いたのだろう。
立香達の方へと向かおうとするが、その前に怒号が飛ぶ。
「傷口に砂埃が入りかねませんので動かないでいただきたい！」
「あぁ、すまない。配慮に欠けていた」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔べないペンギン(プロフ) - 灰かぶりさん» コメント及び応援ありがとうございます。この辺りの話を確りと考えていなかったためにかなりスローペースでの更新になりますが、気長にお待ちいただけると非常に嬉しいです。灰かぶり様も最近寒暖差が大きいですのでお身体をご自愛ください。 (2023年2月8日 18時) (
レス) id: 59a8ce4908 (このIDを非表示/違反報告)
灰かぶり(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました。言葉遣いが丁寧で、読んでいてとてもわくわくしました！Fate関連の作品は少ないですが、これからも楽しみにしております。お身体にお気をつけて。応援しております！ (2023年2月8日 10時) (レス) @page17 id: 54c03ac678 (このIDを非表示/違反報告)
翔べないペンギン(プロフ) - 夢プリンさん» 前回に続き今回もコメントをありがとうございます。御存知でしたか。仰るとおり、クー・フーリンの結婚のお話っぽくしております。自己解釈・捏造・御都合なんでもこいな展開になりつつあるうえ更新もまばらになると思いますが、完結までお付き合いいただけると幸いです (2022年11月14日 18時) (レス) id: 05fbcee79b (このIDを非表示/違反報告)
夢プリン(プロフ) - うわあぁぁ！！クー・フーリンの結婚ですね！めっちゃ好きです！！ (2022年11月14日 12時) (レス) @page15 id: 0c2c417461 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2022年8月28日 0時
