五十三つ葉 ページ6
しょんぼりと冷たいタイルの廊下の端で、東洋に伝わる座り方である正座をさせられているネロ。
その傍らには両手を腰に当ててネロに説教を垂れているブーディカの姿があった。
「まったく、ちゃんとあとでマスターにも謝るんだよ?」
「……」
「返事!」
「はい……」
心なしかアホ毛も垂れ下がっているように見える。
少し悪いことをしてしまったか、と思ってしまうAだが流石に素顔を見せるのは憚れるためここは鬼になるしかない。
壁に背を預け、黙って二人を眺めていたAとクー・フーリンだが落ち着いた頃合に彼女に問う。
「で?」
「?」
「なんで追い掛け回された?」
尻目でAを見下せば彼女は少しだけ顔を動かしクー・フーリンの方を見上げた。
まるで彼を尻目で見るかのように。
「些細なことです」
「へぇ……、それはなんだ? 奴の興味を引くようなことだった、ってことだな?」
「そうなりますね」
訝しげに見下ろすがAは動じることもなく、そもそもクー・フーリンの表情が見えているのかも怪しい、その口元に弧を携えているだけ。
ネロが助けを求めるように二人を見上げるが生憎気付いくことはない。
「こら、ちゃんと聞きなさい」
「き、聞いておるぞ!」
正座をさせれているため徐々に足の感覚がなくなっていることに気付いているネロは足を崩したいと言うが勿論却下である。
「ブーディカ様、そろそろ足だけでも崩して差し上げたほうがいいのではないでしょうか」
「駄目だよA、ここで甘やかしたらいけないんだから」
「……ご愁傷様だな」
目に涙を溜めているネロは誰が見ても同情を買うだろう。
だがブーディカは許さなかった。
同じことを二度起こさないため、確りと灸を添えなければならないからだ。
これは長期戦になることだろう。
事の発端な訳あり、去ろうにも良心が呵責して去れないAと、野次馬精神
ネロの説教が終わったのはかれこれ三十分後のことである。
人数が少なくなっているとはいえ此処は廊下。
誰かが通るのは当たり前のことである。
ドラゴンスレイヤーである誰かを探していたジークフリードが一体何をしているのかわからない、という表情で傍観しざるおえないA達に声を掛け、事情を聞いて止めた次第だ。
長らく正座をしていたため生まれたての小鹿のように足を抱えてネロは唸っていた。
101人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2020年2月28日 21時