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九十一つ葉 ページ46

「そうだ! Aと清姫の逸話のお話も聞かせてくれないかな」

名案だと言わんばかりにアレキサンダーはそう言う。

「わたくしと安珍様の話ですか? えぇ、えぇ。喜んでお話しいたしますわ」
「Aはダメかな?」
「……えぇ、わかりました。お話ししましょうか」

困ったようにフードの下でAは笑って了承の言葉を一つ。

話すとなれば本日で二度目になるだろう。

一度目は()の光の御子(みこ)の伴侶の話。

ならば、二度目は()の光の御子(みこ)の最後の戦いか。

「話すなら食堂でどうだ? 今なら混雑が落ち着いた頃合いだろう」
「確かに! そういう英雄譚や冒険譚は酒の席でこそ聞く方が楽しいしね! ……今はこの姿だからか飲ませてもらえないけど」

アタランテの提案により、四人は食堂へと歩き始めた。

まさかまた食堂で(クー・フーリン)のことを話すことになるとはA自身思ってもみなかった。

混雑時のピークは過ぎ去ったとはいえ、何名かの職員やサーヴァントがいることだろう。

だが清姫と共に先に歩く、楽しげに笑う小さき大王をみれば諦めたように息を吐き肩を少しだけ落とした。

「話すことは億劫か?」

どうやら肩を落とす動作をアタランテに見られたようだ。

Aは隣立つ純潔の狩人の問いにいえと否定を述べた。

「その割には気乗りしない様子だと私には見えるが」
「……そうですね、余り自身のことを話すのは好きではありませんね。いやなものまで思い出してしまいますから……」

いやなものとはいったいどのことか。

クランの猛犬の逸話はどれもこれも豪胆であり、どの話にもこの英霊が全力で挑んでいたことは語られている。

そこにいやなものなど存在するのか。

(なんじ)は……」
「Aー! アタランテー! 早く食堂に向かおうよー!」

いつのまにか二人とも足を止めていた。

アレキサンダーの声に気付くや否や、促されるまま二人は食堂の方へと足を進める。

そこにはもう会話はない。

Aは話す気は毛頭なく。

アタランテも問い(ただ)すこともしない。

ただ、二人の間には少しばかりの言葉では表現しにくい空気が漂っていた。

程なくして到着した食堂はアタランテが言った通り食事を楽しむ職員が数名と、ティータイムを楽しむサーヴァントが数名。

それと、後片付けに勤しむエミヤとブーディカの二人がいた。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年2月28日 21時

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