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八十九つ葉 ページ44

「初めまして。僕はヘンリー・ジギル。まさかアイルランドの光の御子(みこ)が女性だったなんて」

驚いた様子のジギルに、立香もマシュもAも顔を見合わせてくすりと笑った。

「僕、何かおかしなことを言ったかな?」
「ごめんジギル、そうじゃないんだ」
「第四特異点でわたし達を助けてくださったジギルさんも、Aさんに対して全く同じことを言われていたのです」

第四特異点のロンドンにて立香とマシュ達を助けてくれたジキルはこう言っていた。

"まさかクランの猛犬が女性だったなんて"

反応も発した言葉も、ほぼ同じ。

同じ英霊のためありえなくもないのだが、ここまで同じだと笑みが溢れてしまうのは仕方がないこと。

そしてAからの返しもまた、似たような発言であった。

「マスターは私の他にもう一人、クー・フーリンを召喚しております。なお、その方の性別は男性ですよ」
「え?」

目を瞬いて驚く英霊に、今度こそ三人は声を上げて笑ってしまった。


閑話休題。


ジギルとの挨拶をそこそこに、立香達は清姫をAに任せてその場を去っていった。

やや清姫を気にするように後ろ髪を引かれるかのように、立香は気にしていた。

いや、Aのことも気にしていた。

だが先程マシュと信じることを決めた。

ゆえに、立香は二人と共にその場を去ったのだ。

ふぅとAが一息を吐いた瞬間、清姫が動き出した。

「よくもよくも! どうしてあなたはわたくしの邪魔をするのですかッ」

側にいるAに掴みかかり前後に揺する。

そのためにフードが少し後ろにずれてしまい、いつもは口元しか見えなかったAの顔が目元まではっきりと清姫には見えてしまった。

だがそのような些細なことよりも、意中の相手との会話を邪魔するAの行動に腹が立っていた。

ゆえに清姫の周囲は感情の起伏によって心持ち気温が高い。

「いえ、清姫様の邪魔はしておりません」
「ならどうしてッ」
「ただ、マスターが少し困っていそうでしたので……」

フードの下から見える表情は声色と同じで困ったような表情。

目尻も眉尻も下げて、斜め下にて自身を睨みあげてくる東洋の少女にどう対応するか困っていた。

「それに、マスターは今新しく召喚に応じて下さった英霊達の案内中です。先輩サーヴァントとしてここはマスターのサポートをする方が、マスターのためになるかと思いまして」
「……」

気温が急激に下がり始めた、いや元の室温に戻ったと言った方が正解か。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年2月28日 21時

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