五十つ葉 ページ3
目を爛々と輝かせ、いや違った、獲物を狙う獅子のように目を光らせてマシュに詰め寄るネロに、立香も後輩の危機と感じて寝転んだ体勢からベットに座り込んでネロに待ったを掛けた。
「落ち着いてネロ、顔が怖いことになってる」
「せ、先輩……」
「Aならちょっと前に此処にいたけど直ぐに出て行ったけど、どうかしたの?」
「ふむ、実はな」
と語るネロは、先程思ったことや感じたことを一部始終語るのである。
「確かに、いつもAさんはフードを目深く被っていらっしゃいますね」
「余はわかるのだ。あのフードの下に隠れている素顔は美人だと!」
熱く語るネロ、同意するマシュ。
立香はというと。
「うん、美人だった」
清姫に違う意味で襲われかけていた時にたまたま見た素顔を思い出して一人感慨深そうに頷いていた。
下からだったが、フードの下から見えた赤い瞳は酷く印象的だった。
やはりクー・フーリンだからか目の色も似ているが、どちらかと言うとAの方が少し暗い色をしていたような……。
少々当時の出来事を振り返っていれば、何故か室内が静かになったため二人の方を見た立香はどうしたのかと問う。
「先輩、Aさんの素顔見たことあるのですか?」
「え? うん、実はちょっと予期せぬ事態の時に少しだけ見たことがあるんだ」
「なに!? ずるいぞマスター! 余はまだ見ておらぬというのに!」
頬を膨らませ、拗ねるという表現が適切かどうかは別として膨れているネロだが直ぐに狩人のような顔でAが出て行ったであろう方向を睨んでいた。
「そういうことだ。余はAの顔を見なければならないという使命がある。ゆえに余は先を行く」
何故そのような使命があるのかという立香のツッコミは届くこともなく、ネロは扉から部屋を出て行ってしまった。
機械的なドアの閉鎖音を耳にしつつも頭を悩ませた立香にマシュはどうしたのかと問う。
「いやさ、もしかして、もしかしなくとも俺、余計なこと言ったかもって思って」
「……少なくともAさんにとってはそうかもしれません」
苦笑い気味の後輩にやっぱりかと思うが言ってしまったものは仕方がない。
頬をかき、今頃何処かへ隠れているであろうAに向かって掌を合わせた。
何事も起きませんように。
「それじゃあマシュ、続きお願いしても大丈夫?」
「はい! 先輩の疲れが取れるようにマシュ・キリエライト。全力で御奉仕させていただきます!」
「……適度で頼むよ」
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2020年2月28日 21時