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六十三つ葉 ページ17

「あ、アルテミス?」
「? あら、マスター。どうしたの?」
「あのぉ、アルテミス、この手を離してもらえたりは……」
「私とダーリンに何か御用?」
「無視しないでぇ……」

涙を流しながら立香に訴え掛けてくるオリオンに、流石に可哀想に思えた立香が促してあげればオリオンに念押しをして解放したのである。

「いやぁ、助かったマスター」
「どういたしまして」
「それより俺達に何か御用?」

かくかくじかじかと立香はレイシフトしてほしいことを言えばアルテミスもオリオンも快く賛成してくれた。

一人と一匹を交えた一行はあと二人を探す。

道中でオリオンがマシュに絡もうとしてきたのでアルテミスと共に立香はオリオンからマシュを守った。

獣だろうが俺の後輩は何人(なんぴと)たりとて許しはしない。

更に言えばダビデも絡もうとしてきたので立香は必死である。

「先輩?」
「マシュは気にしなくて大丈夫」

一匹が満身創痍のまま、レイシフトをするためのメンバーを探し続けること約数分。

廊下を進んでいれば曲がり(かど)から一人の女性が立香達の方へと姿を現した。

「なっ」

立香に引っ付いていた清姫が苦い顔をする。

「嘘吐きの泥棒猫と一緒にレイシフトだなんて……」

現れたのはAである。

にこりと口元しか見えない表情の彼女は五人に挨拶したのち、どうかしたのかと尋ねた。

三度目の説明をすれば快諾したいところだが、立香の隣で自身を睨み付ける清姫にAは苦笑いしか浮かばない。

「私としては問題ないのですが、そちらの方が私がメンバーに加わるのは嫌なようです」
「え? 清姫、Aが加わるの嫌なの?」

不思議そうに清姫を見る立香。

至近距離の視線にやや恍惚としたような表情の清姫は立香にしがみつくように更に力を入れて問題ないと言うのである。

許可、清姫に許可をとる必要性があったかはこの際見ないこととして、を取れたAは早々に立香と清姫を剥がしにかかった。

「またわたくしから安珍様(マスター)を奪うのですか!?」
「さぁマスター、他の方を探しに参りましょう」
「聞いているのですか泥棒猫!」

そしてそれとなくマシュを立香の隣へと誘導し、Aは仔犬のように吠える清姫の相手をするのだ。

「……なんというか、手慣れてるなあのお姉ちゃん。あと絶対びじ」
「ダーリン?」
「イエ、ナンデモナイデス」

一睨みされたオリオンは黙った。

賢明な判断である。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年2月28日 21時

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