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五十九つ葉 ページ13

喋るぬいぐるみ、(もとい)オリオンがアルテミスの頭の上で立香に声を掛けていた。

神格クラスが付いているためかどうかは不明だがオリオンはオケアノスの記憶を有していた。

勿論アルテミスも覚えており、エウリュアレも神格クラスのため例外ではない。

「あなた、もしかしてアステリオスのこと気にしてたの?」

空気を読んでか、他のサーヴァント達は静かにしていた。

一部はあえて空気を読んだのか、こっそりと部屋を出ていっているのだが気付いたのは緑の狩人のみ。

注意しようにもこの重い空気の中発言するのはなかなかに憚られるために、狩人は黙るしかなかったのであった。

裏でそんなことがあったとは露知らず、エウリュアレは答えない立香の前に立つと呆れたように溜め息を一つ零す。

「彼の意思を汲み取っての判断をしたのでしょう? なら貴方は一人の英雄の勇姿を見ただけ。誇りなさい」
「……うん」

それでも尚、落ち込んでいる立香に召喚されたサーヴァントの内一人が前に出て、立香の背を叩いた。

ドレイクである。

「!?」
「何をうだうだ悩んでいるんだ。アンタはただ自分の使命を全うしただけだろ? ならアンタは何も気負う必要はない。この女神様の言う通り、一人の英雄の勇姿を見た生き証人だってことだ」

一瞬目を剥いた立香だが、直ぐにそうだねと笑顔を見せた。

どうやらドレイクの言葉が胸に響いたらしい。

ほっと安堵の息をマシュは吐いた。

そして少しだけ、本の少しだけ立香を励ませられなかった自分を悔やんだ。

経験不足なことを踏まえてもやはり尊敬する先輩(マスター)の支えになりたいと考えていた。

だが立香の曇りのない顔によかったと納得させたのである。

「マスター、お話中のところ悪いのだが少しいいだろうか」

雰囲気が緩和されたことを察し、声を上げたのは緑の狩人ことアタランテだ。

彼女はやや眉間に皺を寄せ、一度出入り口の方向を見てから立香に向き直った。

「? どうかしたのアタランテ」
「ダビデが」
「ダビデ?」
「ダビデさん? 確か少し前にそこに……」

マシュが指差した方向には勿論いない。

何処だと立香とマシュが探すなか、アタランテはやや冷や汗をかきながらこう続けた。

「ダビデが、部屋の外へと出ていったんだ」

そうなのかと立香は言う。

おそらく重い空気に堪え兼ねたのかもしれない。

あとで謝らなければと考えたのだが実際問題彼はそのような理由で部屋の外へ出たのではないのである。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年2月28日 21時

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