アオハル。 (ページ9)

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まだ2人とも猫をかぶっていて、大人しかった頃、私は丈の顔を見ているのが好きだった。

授業中、静かにしている時はまぁまぁ整った顔をしているくせに、休み時間になって話し始めると途端に顔がうるさくなるのだ。

その切り替えが見れる授業終わりは、外を見るフリをしながら、左隣の丈の顔を見ていた。

その日も、チラチラと丈の顔を確認していたら、チャイムが鳴って授業が終わった。

だけど丈は、その真剣な顔のまま、急に右隣の私を見た。

丈「前から気になってたんやけど……俺の顔、見てへん？」

「…へ、」

丈「…気のせいやったら、ごめん」

今より断然素直だった彼は、先に謝って自分の言動に保険をかける。

「……ううん、見てた。」

丈「え…なんで、」

「…あの、怒らんといてな？」

私も先に保険をかけて、正直に顔の変化を楽しんでいたことを話す。

すると途端に休み時間のうるさい顔になって、笑い始めた。

丈「何お前、めっちゃ失礼やん！笑」

思ってもみない理由だったのか、笑いが止まらない丈をみて、私もつられて笑った。

それから私たちは、どんどん打ち解けて、クラス1、2を争う問題児になった。

先生たちも手を焼いていたから、絶対クラスは離れるだろうな、と思っていたのに

まさかの3年連続同じクラス、3年連続出席番号が前後だったのだから、神様ってやつは運命の使い所を間違えとるな～って思った、高校3年の春。

「3年のクラスは、志望校である程度分けるって言っとったから、離れると思ったわ」

丈「志望校も一緒って…」

「私がここ行くって言うたら、俺もって真似してきたからな」

丈「は？ちゃうし！俺はずっとここ志望してました～」

合格すれば、大学まで一緒だと言うんだから、本当に神様ってやつは…(以下略)。

だけどなんだかんだ、彼と一緒にいるとラクで。

「丈、集中講義、申し込んだ？」

丈「おん。家じゃできんからな」

「私も。一緒受けようや」

丈「おっけ、席とっとく～」

放課後、希望者だけが受けられる集中講義。

大きな教室でやるそれに、ひとりで行くのは勇気がいったから助かった。

無糖コーヒーとカフェオレを買って、教室に向かうと、丈がこちらに手を振っている。

ありがとう、どっちがいい？って缶を見せると、「お前ブラック飲めへんやん」と言いながら、無糖コーヒーを手に取った。