アオハル。 (ページ39)

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謙「……で、CDを貸し借りする仲になったって訳か」

映画研究会、なんて幽霊部員の多い部活の、数少ない映画好きメンバーの長尾くん。

今日はたまたま部室で映画を見ていた長尾くんと、お菓子をつまみながら世間話。

そこで道枝くんのことを聞かれた私は、ついでに近況報告まですることになってしまって。

「まぁホントに、貸し借りだけの仲ですけど…」

謙「え、ちょっと見して、トーク画面」

「はっ？嫌だわ！、！！」

謙「まーまーまーまー！！ちょ、貸してみって」

無理やりスマホを奪われた私は、取り戻そうとするけれど上手くいかない。

その間にニヤニヤしながら何かを打った長尾くんは、「はい送信！！」という声とともに私にスマホを返す。

「ちょお、何打って…」

謙「言うとくけどみっちー、暇な時は通知見んのめっちゃ早いから、送信取消とかしても無駄やで」

「は、……」

画面を見ると、私から道枝くんに『CD以外のことでも何でも、連絡してね』と、突然送信されており、

なんじゃこりゃ！！と思った時にはもう遅く、既読がついてしまった。

「ちょっとぉ、！何してんの！！！ヤバいやつやん、私…っ！！」

謙「だーいじょうぶ！みっちーは、それくらい攻めても気づかんて」

「うそだ…！！」

涙目で抗議する私を、笑いながら嗜める。

するとすぐに返信がきて、長尾くんも一緒に画面を覗き込んだ。

「…『じゃあ、うちの犬紹介してもいい？』」

謙「そう来たか笑」

「…えっと…これは…」

謙「な？気づかんて言ったやろ？毎日わんちゃんの写真送られてくんで」

得意気にそう言われて、何も言い返せない。

ポンッとすぐに鳴ったスマホを見ると、そこにはかわいいトイプーの写真が。

愛犬がトイプーだから、あのスタンプか…と、点と点が繋がる感覚に、笑ってしまう。

謙「愛犬家やから、いい反応やと永遠に送られてくんで。褒めるのもほどほどにな笑」

既に経験済みなんだろう長尾くんの言葉に、素直に頷く。

ふざけてからかってるだけかと思ったけど、ちゃんと道枝くんのことを知ってる人だ、この人。

「…長尾くんから見て、道枝くんと…私って…その、」

謙「…みっちーはさ、」

謙「嘘が、つけへんから。」

だから、Aが見たまま、感じたままを信じたらいいよ。

と、穏やかに言った。