アオハル。 (ページ33)

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夜になってお風呂から出た後、謙杜の部屋をノックした。

中から、はーい！と返事があったのでドアを開けると、お母さんだと思っていたのかビックリした顔で迎え入れてくれた。

謙「どうしたん？」

「いや、これ、返しに来た。ありがとう」

謙「あ～」

畳まれたカーディガンを見て、納得した表情を浮かべる。

それを受け取った謙杜が、すんっと鼻を動かした。

謙「Aの匂いする」

「え！？やだ、洗って返す！」

謙「だめでーす、もう返してもらったもん」

楽しそうに笑った謙杜は、カーディガンをクローゼットに仕舞う。

さっきの事が気になって動かずにいる私を見て、謙杜は座っていた机のライトを消して、ベッドに腰掛けた。

謙「ここ座る？」

「あ、うん…」

謙「どうしたん？なんかあった？」

「うーん…、」

謙「？」

「…いや！やっぱなんでもない！寝る！」

隣に座ったものの、やっぱり聞けない！と思い直し、立ち上がる。

おやすみ！！とその場を急いで立ち去ろうとすると、

謙「待って」

パシっと左手が掴まれて、振り返る。

ベッドに腰掛けた謙杜が、私の手首をくいっと少しだけ、引いた。

謙「…もしかして、さっき起きてた？」

「えっ！？」

謙「……やっぱり。起きてたんや」

はぁ～ってため息をつきながら下を向いてしまった謙杜。

気まずいけど、手首が掴まれているから離れることはできない。

謙「…まぁ、もう聞かれたなら隠さなくていっか」

「え、…」

謙「俺は、Aのこと…家族としてやなくて、ひとりの女の子として、好きやで」

なんともいえない感情が、心の中をざわつかせた。

もちろん嬉しいのだけれど、お姉ちゃんの立場になると喜びきれない。

そんな複雑な心境が顔に出てしまっていたのか、謙杜は上手な作り笑いをしてパンっと手を叩いた。

謙「…って、そんな事言われても困るか！もうこの話おわり！」

「え、謙杜、」

謙「もう俺寝るから！はよ部屋戻ってや、姉ちゃん。」

「待っ…」

ぐいぐいと肩を後ろから押されて部屋を出る。

2人きりの時に、名前でなく『姉ちゃん』と呼ばれたのは初めての事だった。

というか、そういう呼び名の違いとか、2人きりの時の雰囲気とか、

謙杜は私を好きかもしれない、と心のどこかで気づいていたのに。

知らなければこのままの関係でいられるって、見て見ぬふりをしてきたんだ。