アオハル。 (ページ23)

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流「そういえば、何か用事でした？急いでたし…」

「え！？あっ、あ～…」

可愛くなったから見せたい！だけで走ってきてしまったので、特に用事がなくて困る。

「いや、うーん、図書館に！図書館に…早く着きたくて…？」

流「…早く？今日何かイベントとかありましたっけ？」

「…ない、んだけど…」

我ながら厳しい。この言い訳は厳しい！

……というかそもそも、言い訳する必要あるんだろうか。

流星くんの事が好きだって気づいて、認めて、可愛くなって…そこまでしといて、気持ちがバレないように隠すなんておかしい。

「…違う」

流「え？」

「…流星くんに、会いたくて。ここならいるかも、って思って…走ってきました」

流「…先輩、それって…」

ほぼ気持ちを伝えたような自分の言葉に照れてしまって、声がどんどん小さくなった。

彼の顔を見るのが怖くて、返事をされる前に図書館に入った。

「あっ」って流星くんが、私の後を追いかけてくるのが分かる。

帰りのHRが終わったばかりの図書館は、まだ誰も来ていなくて

図書館の奥、窓際の特等席までたどり着くと、腕を掴まれた。

流「まって」

「…流星く、」

流「僕、自惚れてもいいですか？」

「へ、…」

流「ええなぁって見てた人と、一緒に帰れたり話せたりするだけで幸せやったのに、…もしかしたら、その子が僕のために可愛くなろうとしてくれてるんじゃないかって…」

「…流星くん、…それって…」

掴んでいた腕が離される。

流星くんの長い睫毛が、瞬きで揺れる。

少しの静寂の中、廊下から人の声が聞こえて、少し気が逸れた。

その瞬間「Aさん」と呼ばれて、ハッと彼を見ると

潤んだ瞳に、じっと見つめられていて、何も言えなくなってしまう。

流「好きです。先輩……僕のこと、好きになってくれませんか？」

ドキッと大きく心臓が跳ねて、ジワジワと身体が熱くなる。

真っ直ぐだった瞳は少し不安そうに揺れていて、そんな彼も愛おしい。

「はい。…もう、好きになっちゃった」

そう言いながら、1歩前に出て流星くんの手をとる。

きゅっと手を握りしめると、少し照れくさそうに笑いながら、

ふわっと優しく抱きしめてくれた。

流「…先輩」

「先輩、じゃなくて…名前がいい、です」

流「…ふふ、かわいい、A」

私の小さなお願いを聞いて、彼は優しい声で笑った。